2026年5月現在、ドル円は150円台で推移している。日米金利差が縮まらない限り、円安基調は続く見通しだ。「このまま円だけ持っていて大丈夫か?」という不安を抱える人は多い。

この記事では、日本在住の個人が外貨建て資産をポートフォリオの何%に設定すべきか、具体的な目安と商品を整理した。新NISAで買えるオルカン・S&P500との関係、外貨預金と外貨建てMMFの違いまで、実数字で解説する。

編集部でも実際に外貨建て資産の比率を調整しながら運用しているので、その感覚も交えてお伝えする。

なぜ円安が「資産防衛」の問題になるのか

円安とは、円の購買力が下がることだ。2021年初頭に1ドル=103円だったレートは、2024年7月に一時161円台をつけ、2026年5月現在も150円前後で高止まりしている。

つまり、同じ100万円の貯金でも、ドル換算の価値は5年で約30%目減りした計算になる。輸入品の値上げ、海外旅行費の高騰、iPhone価格の上昇――すべて円安の影響だ。

日銀は2024年3月にマイナス金利を解除し、2025年1月に政策金利を0.5%へ引き上げたが、米国のFFレートは4.25〜4.50%(2025年12月時点)と依然として大きな金利差がある。日本銀行 金融政策決定会合の議事要旨を見ても、急激な利上げは想定されていない。

結論から言うと、「円だけで資産を持つこと」自体がリスクになっている時代だ。外貨建て資産を一定割合持つことは、投機ではなく防衛の手段である。

外貨建て資産はポートフォリオの何%が適切か

GPIFの2024年度末の基本ポートフォリオは「外国株式25%+外国債券25%」で、合計50%が外貨建てだ(GPIF 最新の運用状況)。世界最大級の年金基金が資産の半分を外貨にしている事実は参考になる。

ただし個人の場合、生活費は円で払う。住宅ローンも円建てだ。為替変動で生活が揺れないよう、以下の目安を提案する。

外貨建て資産の目安(生活防衛資金を除いた投資可能資産に対して):

  • 20代〜30代(投資期間20年以上): 50〜70%
  • 40代(投資期間10〜20年): 40〜60%
  • 50代以降(投資期間10年未満): 30〜50%

「多すぎないか?」と思うかもしれないが、新NISAでオルカン(eMAXIS Slim 全世界株式)を積み立てている人は、それだけで外貨建て比率が約94%になっている(日本株比率は約5.5%、2025年3月時点の目論見書より)。すでに気づかないうちに外貨建て資産を持っている人は多い。

新NISAのオルカン・S&P500は「外貨建て資産」に含まれるか

結論から言うと、含まれる。円建てで購入しているが、中身は外貨(主にドル)建ての株式だ。為替ヘッジなしの投資信託は、基準価額が為替変動の影響を受ける。

主要ファンドの実質外貨比率(2025年3月時点の目論見書・月報ベース):

  • eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー): 約94%が外貨建て(米ドル約63%、ユーロ約8%、その他)
  • eMAXIS Slim 米国株式(S&P500): 実質100%が米ドル建て
  • eMAXIS Slim 先進国株式: 約95%が外貨建て

つまり、新NISAでオルカンを月3万円積み立てている人は、毎月約2.8万円分の外貨建て資産を買っていることになる。「外貨建て資産を別途買わなきゃ」と焦る前に、まず自分のポートフォリオの外貨比率を確認しよう。

確認方法は簡単だ。証券会社のマイページで保有資産一覧を開き、各ファンドの月報で「通貨別構成比」を見ればよい。

株式以外の外貨建て資産|外貨預金・MMF・債券ファンドの使い分け

株式100%のポートフォリオだと、円安メリットを受けつつも株価下落リスクを丸ごと抱える。外貨建ての「守り」のポジションも検討したい。

外貨預金

最もシンプルだが、為替手数料が高い。メガバンクの米ドル預金は片道1円(往復2円)が相場で、仮に150円で買って152円で売っても手数料負けする。

ネット銀行なら手数料が安い。住信SBIネット銀行は片道6銭(2026年5月時点)、ソニー銀行は片道15銭。短期的な為替差益を狙うのではなく、「円安時に備えてドルを一定量確保しておく」用途向きだ。

注意点として、外貨預金は預金保険(ペイオフ)の対象外である。銀行が破綻した場合、全額返ってこない可能性がある。

外貨建てMMF(マネー・マーケット・ファンド)

証券口座で買える短期債券ファンド。2026年5月時点の利回りは米ドル建てMMFで年4.0〜4.5%程度(楽天証券 外貨建てMMF一覧で確認可能)。

外貨預金との違い:

  • 利回りが高い(外貨定期預金より0.5〜1%高いケースが多い)
  • いつでも解約可能(翌営業日に円転できる)
  • 為替差益は申告分離課税20.315%(外貨預金は雑所得で総合課税)
  • 投資者保護基金の対象(1,000万円まで保護)

要するに、外貨預金より税制・流動性・保護の面で有利だ。「ドルで置いておく」なら外貨建てMMFを第一候補にすべきだろう。

外貨建て債券ファンド(投資信託)

より長期で運用するなら、米国債や先進国債券に分散投資するファンドもある。eMAXIS Slim 先進国債券インデックスは信託報酬0.154%(税込)で、為替ヘッジなし。金利低下局面では債券価格の上昇益も狙える。

ただし、金利上昇局面では基準価額が下がるリスクがある。2022〜2023年の米利上げ局面では、先進国債券ファンドが円ベースでも10%以上下落した時期があった。

実践:資産規模別のモデルポートフォリオ

編集部で実際に検討したモデルケースを紹介する。あくまで一例であり、個人のリスク許容度・ライフプランによって調整が必要だ。

ケース1: 投資可能資産300万円・30代会社員

  • 新NISA つみたて投資枠: オルカン 月3万円(外貨比率94%)
  • 新NISA 成長投資枠: S&P500 月2万円(外貨比率100%)
  • 特定口座: 外貨建てMMF 50万円(ドル建て)
  • 円建て: 生活防衛資金6ヶ月分+個人向け国債 変動10年

→ 投資資産のうち外貨比率: 約65%

ケース2: 投資可能資産1,000万円・50代会社員

  • 新NISA: オルカン 月10万円
  • 特定口座: 先進国債券ファンド 200万円
  • 特定口座: 外貨建てMMF 100万円
  • 円建て: 個人向け国債+定期預金で400万円

→ 投資資産のうち外貨比率: 約45%

ポイントは「株式だけでなく、債券・MMFで外貨比率を調整する」ことだ。株式は成長を取りに行く資産、MMF・債券は為替リスクを取りつつボラティリティを下げる緩衝材として機能する。

注意点:外貨建て資産のリスクと税金

外貨建て資産は万能ではない。以下のリスクを理解してから取り組もう。

  • 為替リスク: 円高に振れれば円換算で目減りする。2022年10月の152円→2023年1月の128円のように、数ヶ月で15%動くこともある
  • 金利変動リスク: 米国が利下げすればMMFの利回りも下がる
  • 税金の複雑さ: 外貨預金の為替差益は雑所得(総合課税)、MMFは申告分離課税、投資信託は特定口座で源泉徴収可能。商品によって税制が異なる

確定申告については、特定口座(源泉徴収あり)で投資信託・MMFを運用していれば原則不要。外貨預金の為替差益が年20万円を超えた場合は確定申告が必要だ(給与所得者の場合、国税庁 No.1900)。

FAQ

外貨建て資産を持つ最低金額の目安は?

新NISAのつみたて投資枠なら月100円から始められる。外貨建てMMFは証券会社によるが、SBI証券・楽天証券とも10ドル(約1,500円)から購入可能だ。まとまった金額がなくても始められる。

今から外貨建て資産を買うのは「高値掴み」にならない?

為替のタイミングは誰にも読めない。対策は時間分散だ。毎月定額で積み立てれば、円高時には多く・円安時には少なく買える(ドルコスト平均法)。一括投入が怖ければ、6〜12ヶ月に分けて買い付けるのが現実的だ。

オルカンだけ積み立てていれば外貨建て資産は十分?

株式としての外貨エクスポージャーは十分だが、「株価が下がったときに使えるドル資金」が欲しいなら、MMFや外貨預金で別枠を確保する意味がある。暴落時に円転してNISA枠を埋める、海外旅行や留学費用に充てるなど、用途があるなら分けて持つのが合理的だ。

為替ヘッジありの投資信託ではダメ?

為替ヘッジありファンドは円高時に有利だが、ヘッジコストがかかる。2026年5月時点で日米金利差が約3.5〜4%あるため、ヘッジコストも年3.5〜4%程度。実質リターンが大きく削られるため、長期保有には不向きだ。

外貨建て保険は資産防衛に使える?

手数料が高く流動性が低いため、資産防衛の手段としては非推奨。同じ外貨運用なら、外貨建てMMFや投資信託の方が手数料・透明性・流動性すべてで優れる。保険は保障目的に限定すべきだ。

参考文献