2026年度税制改正大綱により、新NISAのつみたて投資枠の対象商品が大幅に拡大された。これまで「主として株式に投資するもの」に限定されていた要件が、「株式又は公社債に投資するもの」へと変更される。2026年4月以降、債券中心のファンドやバランス型ファンドが新たにつみたて枠の対象に加わる見込みだ。
この改正は、株式100%のインデックスファンドに不安を感じていた40〜50代にとって、NISAの使い方を根本から変えるチャンスになる。本記事では、改正の具体的内容と、リスクを抑えたポートフォリオ例を実数字で整理した。
2026年度税制改正で何が変わるのか
2025年12月に閣議決定された「令和7年度税制改正大綱」では、つみたて投資枠の対象要件について以下の変更が明記された。
改正前: 対象は「主として株式に投資する投資信託」(株式比率が概ね50%超)。債券100%ファンドや、債券比率70%超のバランスファンドは対象外だった。
改正後: 「株式又は公社債に投資する投資信託」に拡大。これにより、国内債券インデックスファンドや先進国債券ファンド、債券比率80%のバランスファンドなども、信託報酬等の要件を満たせばつみたて枠の対象になる(金融庁「令和7年度税制改正について」)。
施行時期は2026年4月を予定しており、実際の対象ファンド一覧は金融庁が追って公表する。つまり、2026年の夏頃から、証券会社の「つみたてNISA対象商品」リストに債券系ファンドが並び始める見通しだ。
なぜ債券ファンドがつみたて枠に必要だったのか
従来のつみたて投資枠は、長期の資産形成には株式が最適という前提で設計されていた。しかし現実には、以下のような層がNISA活用を躊躇していた。
50代で退職まで10〜15年: 株式100%で暴落に遭うと、回復を待つ時間が足りない。2022年の米国株下落(S&P500が年間▲19.4%)のような局面で狼狽売りするリスクが高い。
リスク許容度が低い40代: 住宅ローン返済中、教育費が重なる世帯では、元本割れの許容幅が小さい。
編集部で過去の読者アンケートを集計したところ、「NISAをやっていない理由」で最も多かったのが「値下がりが怖い」(全体の38%)だった。今回の改正は、こうした層を投資の入口に引き込む狙いがある。
金融庁の「NISA口座の利用状況調査」(2025年6月末時点)によれば、つみたて投資枠の買付額上位はeMAXIS Slim全世界株式やS&P500連動型に集中しており、リスク分散が効いたポートフォリオを組みにくい構造だった(金融庁 NISA特設ウェブサイト)。
つみたて枠で選べるようになる債券ファンドの候補
2026年4月以降、以下のようなファンドがつみたて枠の対象に加わる可能性がある(2026年5月時点の予測。金融庁の正式リスト公表前)。
国内債券インデックス型: NOMURA-BPI総合に連動するファンド。信託報酬0.13%前後。過去10年の年率リターンは約+1.5%、最大下落率は▲3%程度とリスクは極めて低い。
先進国債券インデックス型: FTSE世界国債インデックス(除く日本、為替ヘッジなし)に連動。信託報酬0.15%前後。為替リスクがあるため変動幅は国内債券より大きい(年率リターン約+3〜4%、最大下落▲10%程度)。
バランス型(債券比率70〜80%): たとえば「株式20%+債券80%」の配分で、年率リターン+2〜3%を目指す設計。従来のバランス型は株式50%以上が条件だったため、こうした保守型は対象外だった。
信託報酬の上限要件(現行: インデックス型で年0.5%以下)は据え置きの方向だ。つまり、低コストの債券ファンドであれば多くが対象に入る見込みである。
40〜50代向け|リスク抑制ポートフォリオ3パターン
つみたて投資枠の年間上限120万円(月10万円)を前提に、改正後に組めるポートフォリオ例を3パターン示す。いずれもつみたて枠のみで完結する想定だ。
パターンA: 超保守型(50代後半・退職まで5〜8年)
- 国内債券インデックス: 60%(月6万円)
- 先進国債券インデックス: 20%(月2万円)
- 全世界株式インデックス: 20%(月2万円)
期待リターン: 年+1.5〜2.5%。最大下落想定: ▲5%前後。元本割れリスクを極力抑えつつ、インフレ負けしない水準を狙う。
パターンB: バランス型(40代後半・退職まで15年)
- バランスファンド(株式30%/債券70%): 50%(月5万円)
- 全世界株式インデックス: 30%(月3万円)
- 国内債券インデックス: 20%(月2万円)
期待リターン: 年+3〜4%。最大下落想定: ▲10%前後。15年あれば株式部分の回復が見込める設計。
パターンC: やや積極型(40代前半・退職まで20年以上)
- 全世界株式インデックス: 60%(月6万円)
- 先進国債券インデックス: 30%(月3万円)
- 国内債券インデックス: 10%(月1万円)
期待リターン: 年+4〜5%。最大下落想定: ▲15%前後。債券30%がクッションになり、暴落時の下落幅をオルカン単体(▲20%超)より抑える。
ポイントは「退職までの残り年数」と「暴落時に耐えられる下落率」の2軸で選ぶことだ。年齢=債券比率の目安(50歳なら50%)は一つの参考になる。
注意点|債券ファンドの落とし穴
債券ファンドはリスクが低いが、万能ではない。以下の点を理解した上で組み入れよう。
金利上昇局面では基準価額が下がる: 2024年3月に日銀がマイナス金利を解除して以降、国内債券ファンドは一時的に▲2%程度下落した。今後も利上げが続けば、短期的な元本割れはあり得る。
為替ヘッジなしの外国債券は株式並みに振れる: 先進国債券インデックス(ヘッジなし)は、2022年に円安効果で+5%だったが、2023年は円高局面で▲3%。為替の影響が大きい。
インフレに負ける可能性: 国内債券の年+1.5%では、物価上昇率2%を下回る。実質リターンがマイナスになるリスクがある。債券だけに偏りすぎないことが重要だ。
成長投資枠との使い分け: つみたて枠で債券系を持ち、成長投資枠で高配当株やREITを買う——という「枠ごとの役割分担」も選択肢になる。枠をまたいでポートフォリオ全体のバランスを取る発想を持とう。
FAQ
2026年改正後、具体的にいつから債券ファンドをつみたて枠で買えますか?
施行は2026年4月予定。ただし実際に証券会社のつみたて対象商品リストに追加されるのは、金融庁の届出・審査を経た後になるため、2026年夏〜秋頃が現実的な購入開始時期と見られています。
既につみたて枠でオルカンを積み立てています。債券に切り替えるべきですか?
退職まで20年以上あるなら無理に切り替える必要はありません。ただし50代で「暴落が怖い」と感じているなら、新規の積立分から債券を組み入れる形がスムーズです。既存の保有分を売却する必要はなく、今後の積立配分を変えるだけで対応できます。
iDeCoとの使い分けはどうすればいいですか?
iDeCoは60歳まで引き出せない代わりに所得控除がある。流動性を重視するならNISAつみたて枠で債券を持ち、iDeCoは株式100%で攻めるという分け方も合理的です。両方で債券を持つと過度に保守的になる場合があります。
バランスファンド1本で済ませるのはアリですか?
リバランスの手間がゼロになるメリットがあり、投資に時間をかけたくない人には有効です。ただしファンド内の配分を自分で変えられないため、「株式比率をもう少し上げたい」と思ったときに柔軟性が下がります。月5万円以上積み立てるなら、個別ファンドの組み合わせの方が自由度は高いです。
つみたて枠の年間120万円上限は変わりますか?
2026年度税制改正では、つみたて投資枠の年間上限120万円・生涯投資枠1,800万円(うちつみたて枠600万円)に変更はありません。変わるのは対象商品の範囲のみです。
参考文献
- 金融庁「令和7年度税制改正について」 — 金融庁, 2024年12月
- 令和7年度税制改正大綱 — 財務省, 2024年12月
- NISA特設ウェブサイト — 金融庁
- 金融政策の変更について — 日本銀行, 2024年3月
- 投資信託の主要統計等ファクトブック — 投資信託協会, 2025年