2025年12月の税制改正大綱で正式に盛り込まれた「こどもNISA」(仮称)。2027年1月からスタートし、0〜17歳の子どもを対象に年間60万円・非課税保有限度額600万円の投資枠が設けられる。旧ジュニアNISAが2023年に新規投資を終了してから約4年、ようやく子ども向け非課税制度が復活する形だ。
結論から言うと、開始まであと1年半以上あるが、証券口座の事前開設や児童手当の積立設定など「今のうちに済ませておくべき準備」は多い。本記事では2026年5月時点で公表されている制度概要、児童手当を活用した月1.5万円の積立プラン、18年間の運用シミュレーション、そして12歳以上で引き出し可能になる新ルールまで整理した。
編集部でも実際にシミュレーションを回してみたが、児童手当だけでも0歳から18歳まで積み立てると元本324万円に対して、年利5%想定で約520万円になる計算だ。制度の細部が確定する前に動ける部分から手をつけておこう。
こどもNISAの制度概要(2026年5月時点の公表情報)
こどもNISAは、2025年末の与党税制改正大綱で創設方針が示された子ども向け非課税投資制度だ。金融庁のNISA特設ページおよび各種報道に基づく概要は以下のとおり。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象年齢 | 0歳〜17歳(口座名義は子ども本人、親権者が代理運用) |
| 年間投資枠 | 60万円(月5万円ペース) |
| 非課税保有限度額 | 600万円(簿価残高方式) |
| 投資対象 | つみたてNISA対象商品と同等(長期・積立・分散投資に適した投信) |
| 非課税保有期間 | 無期限 |
| 口座開設 | 親権者が証券会社で代理開設 |
| 引き出し | 原則18歳まで払出し制限あり。ただし12歳以上は本人の意思で引き出し可 |
| 18歳到達時 | 成人NISA(つみたて投資枠・成長投資枠)に非課税のまま移管 |
| 開始時期 | 2027年1月 |
旧ジュニアNISAとの大きな違いは「非課税期間が無期限」「12歳以上の引き出し柔軟化」「投資対象がつみたてNISA準拠で絞られている」の3点だ。旧制度は年80万円枠だったが、5年で非課税期間が切れるなど使い勝手の悪さが指摘されていた。こどもNISAではこれらが改善されている。
なお、制度の細部(対象商品の具体リスト、金融機関の対応スケジュール等)は2026年中に確定する見込みだ。本記事の情報は2026年5月時点の公表内容に基づいており、今後変更される可能性がある点に注意してほしい。
児童手当を活用した月1.5万円積立プラン
2024年10月から児童手当が大幅に拡充された。こども家庭庁の公式ページによると、改正後の支給額は以下のとおりだ。
| 区分 | 月額 |
|---|---|
| 第1子・第2子(0歳〜高校生) | 1万5,000円 |
| 第3子以降(0歳〜高校生) | 3万円 |
所得制限は撤廃され、支給対象も高校生(18歳到達後の最初の3月31日まで)に拡大された。つまり、第1子・第2子でも月1.5万円×12ヶ月=年間18万円を受け取れる。
こどもNISAの年間投資枠60万円(月5万円)に対して、児童手当の月1.5万円はちょうど30%をカバーできる。「手当は全額投資に回す」と決めてしまえば、残り月3.5万円を家計から追加するだけで枠をフルに使える計算だ。
もちろん、月1.5万円の児童手当分だけでも十分に意味がある。年間18万円×18年間=元本324万円。これを長期運用に回すのが、今回提案する「児童手当まるごと積立プラン」だ。
児童手当の受取口座と積立の自動化
現在、児童手当は自治体から指定の銀行口座に振り込まれる(年3回:2月・6月・10月に4ヶ月分ずつ)。こどもNISAで自動積立を設定するなら、以下の流れを整えておくとよい。
- 児童手当の受取口座を、証券会社の入金元口座(銀行口座)に指定する
- 証券会社側で毎月1.5万円の自動積立(引落し)を設定する
- 児童手当は4ヶ月ごとにまとめて入金されるため、口座に最低6万円(4ヶ月分)の残高を維持しておく
SBI証券や楽天証券では、銀行口座からの自動引落し→投信積立の仕組みがすでにある。こどもNISA対応の積立設定が2027年までに各社から発表されるはずなので、まずは親の証券口座で操作感を確認しておくのがおすすめだ。
18年間の運用シミュレーション|月1.5万円で元本324万円はいくらになるか
児童手当の月1.5万円を0歳から18歳まで積み立てた場合のシミュレーションを、想定利回り別にまとめた。計算は金融庁の資産運用シミュレーターの計算式に基づく。
| 想定利回り(年率) | 元本 | 運用益 | 18年後の評価額 |
|---|---|---|---|
| 3% | 324万円 | 約126万円 | 約450万円 |
| 5% | 324万円 | 約196万円 | 約520万円 |
| 7% | 324万円 | 約286万円 | 約610万円 |
年利5%は、全世界株式インデックス(オルカン)の過去20年間の平均リターンに近い水準だ。もちろん将来の利回りを保証するものではないが、18年という長期で見れば元本の1.6倍程度になる可能性は十分にある。
さらに、月5万円(年間枠60万円フル活用)で積み立てた場合はこうなる。
| 想定利回り(年率) | 元本 | 18年後の評価額 |
|---|---|---|
| 3% | 600万円(上限到達は10年目) | 約870万円 |
| 5% | 600万円 | 約1,040万円 |
| 7% | 600万円 | 約1,260万円 |
非課税保有限度額600万円は簿価残高方式なので、月5万円で10年(600万円)投資すると枠を使い切る。その後も非課税で運用が続くため、10年目以降は追加投資なしでも複利で増えていく。
要するに「児童手当だけでも約520万円、枠フル活用なら約1,000万円超」が18年後の目安だ。子どもの大学資金として十分な金額になりうる。
12歳以上の引き出しルール|旧ジュニアNISAとの違い
こどもNISAの注目ポイントのひとつが、12歳以上(中学生以上)で本人の意思による引き出しが可能になる新ルールだ。
旧ジュニアNISAでは18歳まで原則引き出し不可で、途中引き出しすると課税口座に移管されるデメリットがあった。この制限が不人気の最大の原因だったと言われている。
こどもNISAでは以下の仕組みになる見込みだ。
- 0〜11歳: 原則払出し不可(災害等の特例を除く)
- 12〜17歳: 本人の意思表示があれば引き出し可能。非課税のまま現金化できる
- 18歳到達時: 成人NISAに非課税で移管。つみたて投資枠・成長投資枠の1,800万円枠にそのまま組み込まれる
12歳からの引き出しは「高校の入学金」「留学費用」「部活の遠征費」など、子ども自身のライフイベントに対応できる設計だ。ただし、引き出した分の非課税枠は再利用できない点に注意が必要だ(成人NISAと同じ簿価残高方式)。
読者からよく聞かれるのが「中学受験の塾代に使えるか」という質問だが、12歳以上で引き出し可能なので小学6年生の2月(中学受験のタイミング)にはギリギリ使える可能性がある。ただし、長期運用の複利効果を最大化するなら18歳まで引き出さないのが最も効率的だ。
2027年開始前に今やっておくべき準備5つ
制度開始は2027年1月だが、事前に整えておくべきことは意外と多い。以下の5ステップを順に進めておこう。
1. 親名義の証券口座を開設する
こどもNISA口座は親権者が代理で開設する。まだ証券口座を持っていない場合、まず親名義の口座開設が先だ。本人確認(eKYC)から口座開設完了まで、最短でも1〜2週間はかかる。SBI証券や楽天証券など、つみたてNISA対応の主要ネット証券であれば、こどもNISAにも対応する可能性が高い。
2. マイナンバーカードを子ども分も取得する
証券口座の開設にはマイナンバーの提出が必須だ。子どものマイナンバーカードをまだ取得していない場合は、自治体の窓口またはオンラインで申請しておこう。申請から交付まで1〜2ヶ月かかることもあるため、早めの対応が望ましい。
3. 児童手当の受取口座を整理する
児童手当の受取口座を、証券会社への入金に使いやすい銀行口座に変更しておく。住信SBIネット銀行(SBI証券連携)や楽天銀行(楽天証券連携)など、証券口座と自動連携できる銀行を選ぶと手間が減る。受取口座の変更は自治体への届出が必要で、反映まで1〜2ヶ月かかる場合がある。
4. 投資方針を夫婦で決めておく
「何に投資するか」「毎月いくら積み立てるか」「引き出しは18歳まで待つか」を夫婦間で合意しておくことが大切だ。特に暴落時に慌てて売却しないためにも、「18年間は原則売らない」というルールを事前に決めておくと心理的に楽になる。
5. 家計の積立余力を確認する
児童手当の月1.5万円だけで積み立てるのか、月5万円(年間枠上限)まで追加するのかを、家計のキャッシュフローから判断する。追加分の月3.5万円は、固定費の見直し(格安SIMへの乗り換え、サブスク整理など)で捻出できるケースも多い。
こどもNISA vs 学資保険|どちらを選ぶべきか
子どもの教育資金準備としてよく比較されるのが学資保険だ。両者の違いを整理しておこう。
| 比較項目 | こどもNISA | 学資保険 |
|---|---|---|
| 期待リターン | 年3〜7%(市場次第) | 返戻率100〜108%程度 |
| 元本保証 | なし(投資信託のため) | あり(満期まで保有の場合) |
| 税制優遇 | 運用益が非課税 | 一時所得控除あり(50万円まで非課税) |
| 死亡保障 | なし | あり(保険料払込免除) |
| 流動性 | 12歳以上で引き出し可 | 途中解約は元本割れリスク |
| インフレ対応 | 株式投資のためインフレに強い | 固定利率のためインフレに弱い |
結論から言うと、18年間の長期運用が前提なら「こどもNISAをメイン、学資保険は死亡保障が必要な場合のみ検討」が合理的だ。学資保険の返戻率は2026年時点で最も高いもので108%前後。18年かけて8%増えるということは年率換算で0.4%程度にしかならない。
ただし、元本保証がないことに不安を感じる場合は、教育資金の一部を学資保険で確保しつつ、残りをこどもNISAで運用する「併用型」も選択肢になる。大切なのは、どちらかに全額集中せず、家庭のリスク許容度に合わせることだ。
FAQ
こどもNISAは何歳から口座を開設できますか?
0歳から開設可能です。親権者が代理で手続きを行います。2027年1月の制度開始後に各証券会社で受付が始まる見込みですが、親名義の口座は今すぐ開設できます。
旧ジュニアNISAの残高はこどもNISAに移せますか?
2026年5月時点では、旧ジュニアNISAからこどもNISAへのロールオーバー(移管)については未確定です。旧ジュニアNISAの残高は18歳まで非課税で保有し続けることが可能なので、詳細が発表されるまで待つのが無難です。
児童手当を投資に回すのはもったいなくないですか?
児童手当を生活費に充てている家庭もあるため、一概には言えません。ただし、月1.5万円を18年間銀行預金に置くと元本324万円のまま(金利はほぼゼロ)。年利5%で運用すれば約520万円になる計算なので、余裕がある家庭では運用に回すメリットは大きいです。
こどもNISAの非課税枠600万円を使い切ったらどうなりますか?
簿価残高方式のため、投資した元本の合計が600万円に達すると追加投資はできません。ただし、すでに投資した分は非課税のまま18歳以降も運用を続けられます。18歳到達時に成人NISAの1,800万円枠に移管されます。
共働き夫婦の場合、夫婦どちらの名義で管理すべきですか?
こどもNISA口座の名義は子ども本人です。親権者はあくまで代理運用者なので、夫婦どちらが管理しても制度上の違いはありません。ただし、児童手当の受取口座を管理する側と合わせておくと入金の手間が減ります。
参考文献
- NISA特設ウェブサイト — 金融庁
- 児童手当制度のご案内 — こども家庭庁
- 資産運用シミュレーション — 金融庁
- 税制改正の大綱 — 財務省
- SBI証券
- 楽天証券