「夫婦でNISAをやるなら、2人ともオルカンに揃えるべき? それともS&P500と分けるべき?」——2026年に入ってからXでも繰り返し議論されているテーマだ。

結論から言うと、どちらが正解かは「米国株の一強がこの先も続くと信じるか」次第で変わる。本記事では、過去10年の実績リターンをもとに夫婦NISAの3パターンを20年シミュレーションし、資産差を具体的な数字で比較する。2026年の日銀利上げ・円高リスクも踏まえ、どう配分するのが合理的かを整理した。

編集部でも「夫婦で同じ銘柄に揃えたほうがシンプルで管理が楽」という声と「片方をオルカンにして地域分散すべき」という声で割れた。実弾で積み立てているメンバーの判断基準も交えながら解説する。

オルカンとS&P500の基本|何が違うのか

まず前提を整理する。2026年5月時点で、つみたて投資枠の人気ツートップは以下の2本だ。

eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)、通称オルカン。MSCI ACWI(オール・カントリー・ワールド・インデックス)に連動し、全世界約50カ国・約2,700銘柄に分散投資する。ただし2026年4月時点の国別構成比で米国が約63%を占めるため、実質的に米国株の比率がかなり高い(三菱UFJアセットマネジメント公式)。信託報酬は年0.05775%。

eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)。S&P500指数に連動し、米国の大型株約500銘柄に投資する。信託報酬は年0.09372%(三菱UFJアセットマネジメント公式)。

過去10年(2016年5月〜2026年4月)の円建て年率リターンを比較すると、オルカンが年率約15.8%、S&P500が年率約18.2%だった(myINDEXの指数データより算出)。この差は主に2020年代前半の米国テック株の急騰と円安進行(1ドル110円→155円台)によるものだ。

夫婦NISAの枠はどれだけ大きいか

新NISA(2024年〜)では、1人あたり年間360万円(つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円)、生涯非課税保有限度額は1,800万円(金融庁 新しいNISA)。

夫婦2人なら年間最大720万円、生涯で3,600万円を非課税で運用できる。月換算で1人10万円ずつ、合計月20万円の積立を想定するのが現実的なラインだろう。

この枠をどう使うかは、資産形成の最終結果に大きく効いてくる。同じ銘柄に集中するか、分けて地域分散するかで20年後の差額は数百万〜数千万円単位になりうる。

20年シミュレーション|3パターンの資産比較

以下のシミュレーションでは、夫婦合計で月20万円(1人月10万円)を20年間積み立てる前提で計算する。

将来リターンは過去実績より保守的に見積もる。過去10年の年率15〜18%には2012年以降の円安サイクル(110円→155円)が含まれており、今後同じペースの円安は見込みにくい。ここではオルカン年率7%、S&P500年率9%を想定した(為替中立+長期平均に近い水準)。

パターンA: 2人ともオルカン(年率7%)

1人あたりの20年後評価額:約5,210万円 → 夫婦合計約1億420万円(元本合計4,800万円、運用益約5,620万円)

パターンB: 2人ともS&P500(年率9%)

1人あたりの20年後評価額:約6,680万円 → 夫婦合計約1億3,360万円(元本合計4,800万円、運用益約8,560万円)

パターンC: 1人オルカン+1人S&P500(分散)

夫婦合計:5,210万円+6,680万円=約1億1,890万円(元本合計4,800万円、運用益約7,090万円)

AとBの差は約2,940万円。CはAより約1,470万円多く、Bより約1,470万円少ない。つまり分散パターンCはちょうど中間に落ち着く。

ただしこれは「S&P500がオルカンを年率2%上回り続ける」前提での計算だ。もし米国株が低迷してオルカン=S&P500のリターンに収束すれば、分散の意味は薄れる。逆にS&P500がさらに上振れれば差は広がる。

2026年のリスク要因|日銀利上げと円高シナリオ

2026年5月現在、日銀は政策金利を0.5%まで引き上げており、市場では年内にさらなる追加利上げの可能性が織り込まれている(日本銀行 金融政策決定会合)。

日米金利差が縮小すれば円高方向に振れやすく、米国株100%のS&P500は為替差損の影響をフルに受ける。一方オルカンは米国63%+欧州・新興国37%なので、ドル安ユーロ高・新興国通貨高の局面ではクッションが効く。

編集部で実弾積み立てしているメンバーの間でも「2025年後半から円高に振れた局面でS&P500一本の含み益がガクッと減った」という声があった。為替リスクを体感すると、地域分散の意味を実感するものだ。

具体的に、仮に1ドル=155円→130円(約16%の円高)が起きた場合、S&P500の円建てリターンは株価が横ばいでも約−16%のインパクトを受ける。オルカンも米国比率63%なので約−10%だが、ダメージは小さい。

結局どう分けるのが合理的か|判断フローチャート

シミュレーションとリスク要因を踏まえた、判断基準を整理する。

2人ともS&P500が向いている夫婦:

  • 20年以上の長期保有を確実にできる(途中売却しない)
  • 米国経済の構造的優位(テック・AI・人口増)が続くと考える
  • 為替が円高に振れても気にせず積み立てを続けられるメンタルがある

オルカン+S&P500に分ける(パターンC)のが向いている夫婦:

  • 米国一強が永続するか確信が持てない
  • 夫婦のどちらかが値動きに敏感で、暴落時に売りたくなるタイプ
  • 円高リスクをある程度ヘッジしたい

2人ともオルカンが向いている夫婦:

  • 銘柄選定に時間をかけたくない、完全にほったらかしで管理コストを最小化したい
  • 世界経済全体の成長を信じている
  • リターン最大化より「大負けしない」ことを重視する

なお「オルカンの中身の63%は米国株」という事実は見落とされがちだ。オルカン+S&P500に分けても、ポートフォリオ全体の米国比率は約81%になる。「分散しているつもりで実はほぼ米国株」という点は認識しておくべきだろう。

FAQ

夫婦で同じ証券口座にまとめられますか?

NISA口座は1人1口座が原則で、夫婦で1つの口座を共有することはできない。それぞれが証券会社で口座を開設する必要がある(金融庁規定)。同じ証券会社で揃えると管理は楽になる。

途中でオルカンからS&P500に乗り換えられますか?

NISA口座内での銘柄変更(スイッチング)はできない。既存の保有分はそのまま保有し、新規の積立先を変更する形になる。売却すれば翌年に非課税枠が復活するが、一度使った枠の年内再利用は不可。

オルカンとS&P500の信託報酬の差は気にすべきですか?

eMAXIS Slim同士の比較では、オルカン0.05775%、S&P500 0.09372%で年率約0.036%の差。1,000万円運用しても年間約3,600円の差なので、銘柄選びの決定打にはならない。

つみたて投資枠と成長投資枠で銘柄を分けるべきですか?

夫婦で銘柄を分ける場合、枠の種類ではなく「人で分ける」のがシンプル。例えば夫はつみたて枠も成長枠もS&P500、妻は両枠ともオルカン、というように1人1銘柄に統一すると管理しやすい。

月20万円も積み立てられない場合はどうすべきですか?

月5万円でも月3万円でも、シミュレーションの比率は同じように当てはまる。金額が少ないほど管理コストを下げたいので、2人ともオルカン1本にするシンプル戦略の合理性が高まる。

参考文献