6月のボーナス、銀行口座に寝かせておくだけではもったいない。「配当金を受け取りながら資産を増やしたい」と考えるなら、米国高配当ETFは有力な選択肢だ。

中でも人気の3本――VYM・HDV・SPYDは、どれも「高配当ETF」と呼ばれるが、中身はまったく違う。配当利回り、経費率、組入銘柄の傾向、値動きの安定性がそれぞれ異なるため、自分の目的に合ったものを選ばないとミスマッチが起きる。

編集部で実際に3本とも保有して配当金を受け取ってきた経験をもとに、2026年6月時点の最新データで横並び比較する。新NISA成長投資枠での買い方と、配当金の受け取り設定の手順まで解説するので、ボーナスの使い道に迷っている人は最後まで読んでほしい。

VYM・HDV・SPYDの基本スペック比較表

まずは3本の基本情報を一覧で確認しよう。2026年6月時点のデータをもとにまとめた。

項目VYMHDVSPYD
正式名称Vanguard High Dividend Yield ETFiShares Core High Dividend ETFSPDR Portfolio S&P 500 High Dividend ETF
運用会社バンガードブラックロックステート・ストリート
ベンチマークFTSE High Dividend Yield IndexMorningstar Dividend Yield Focus IndexS&P 500 High Dividend Index
組入銘柄数約620銘柄約75銘柄約80銘柄
経費率(税込)0.06%0.08%0.07%
配当利回り(SEC 30日)約2.3%約3.1〜3.4%約4.0〜4.5%
配当頻度年4回(3・6・9・12月)年4回(3・6・9・12月)年4回(3・6・9・12月)
銘柄加重方式時価総額加重配当加重均等加重

結論から言うと、経費率は3本とも0.1%以下で差はほぼない。選ぶ際に注目すべきは「配当利回り」「銘柄数(分散度)」「加重方式」の3点だ。

配当利回りと値動きの安定性――トータルリターンで見ると景色が変わる

「高配当ETF=配当利回りが高いほど良い」と思いがちだが、トータルリターン(値上がり益+配当)で比較すると順位が逆転する。

過去10年間のトータルリターン(配当再投資ベース)を見ると、VYMが約+200%超と最も高い。HDVが約+130〜150%、SPYDは設定が2015年と新しいが約+80〜100%にとどまる。

つまり、配当利回りではSPYD > HDV > VYMだが、値上がり益を含めた総合リターンではVYM > HDV > SPYDとなる。「配当金を受け取りつつ元本も成長させたい」ならVYMが有利だ。

一方、値動きの安定性という観点では、HDVが比較的ディフェンシブ(生活必需品・ヘルスケア中心)で下落局面に強い傾向がある。SPYDは不動産セクターの比率が高く、金利上昇局面で株価が下がりやすい点には注意が必要だ。

構成銘柄とセクター配分の違い

3本の性格の違いは、セクター配分を見ると一目瞭然だ。

VYM――幅広く分散、REIT除外

約620銘柄と圧倒的に多い。上位にはBroadcom(約8%)、JPモルガン(約3.3%)、エクソンモービル(約2.7%)が並ぶ。金融・テクノロジー・ヘルスケア・生活必需品と幅広いセクターに分散しており、REIT(不動産投資信託)は除外されている。「高配当だけどインデックス投資に近い分散が欲しい」人向けだ。

HDV――ディフェンシブ銘柄に集中

約75銘柄と絞り込まれており、上位10銘柄で全体の約51%を占める集中型。ETF Trendsの分析(2026年)によると、生活必需品(約24%)、エネルギー(約22%)、ヘルスケア(約17%)の3セクターで6割以上。エクソンモービル(約8.5%)やアッヴィ(約5.4%)など、景気後退でも需要が落ちにくい企業が中心だ。

SPYD――不動産・公益に偏重、均等加重

S&P 500の中から配当利回りが高い上位80銘柄を均等加重で組み入れる。最大の特徴は不動産セクターが約26%と突出して高いこと。公益事業やエネルギーの比率も高い。均等加重のため特定銘柄への集中リスクは低いが、セクター偏りが大きい。金利が上がると不動産・公益が売られやすく、2022年の利上げ局面ではSPYDが3本中で最も大きく下落した。

新NISA成長投資枠での買い方――口座開設から注文まで

VYM・HDV・SPYDはいずれも新NISAの成長投資枠で購入できる。成長投資枠の年間上限は240万円で、非課税保有限度額は1,200万円(うち成長投資枠)だ。

以下、SBI証券を例に手順を整理する(楽天証券・マネックス証券もほぼ同じ流れ)。

ステップ1: NISA口座を開設する

証券口座の開設時に「NISA口座を同時に申し込む」にチェックを入れる。すでに証券口座がある場合は、マイページからNISA口座の追加申し込みが可能だ。税務署の審査に1〜2週間かかるので、ボーナス前に早めに動こう。

ステップ2: 外国株取引口座を開設する

米国ETFを買うには、証券口座に加えて「外国株式取引口座」の開設が必要だ。SBI証券の場合、マイページの「外国株式」メニューから申し込める。こちらは即日〜翌営業日で完了する。

ステップ3: 円をドルに交換する(為替取引)

米国ETFはドル建てで取引される。「円貨決済」を選べば自動で両替されるが、為替手数料が割高になることがある。SBI証券では住信SBIネット銀行経由の外貨積立で為替コストを片道6銭に抑えられる(2026年6月時点)。まとまったボーナスを投入するなら、先にドル転しておくのがコスト面で有利だ。

ステップ4: NISA枠で買い注文を出す

外国株式の注文画面でティッカー(VYM / HDV / SPYD)を検索し、「NISA成長投資枠」を選択して買い注文を出す。米国市場は日本時間23:30〜翌6:00(夏時間は22:30〜翌5:00)に取引されるため、成行注文は夜間に約定する。

ステップ5: 配当金の受け取り方式を設定する

ここが意外と見落とされるポイントだ。NISA口座で配当金を非課税で受け取るには、配当金受け取り方式を「株式数比例配分方式」に設定する必要がある。銀行口座受取やゆうちょ受取のままだと、NISA口座でも国内課税(20.315%)がかかってしまう。

なお、米国ETFの配当金には米国での源泉徴収(10%)がかかり、これはNISA口座でも免除されない。つまり、NISA口座で受け取った場合の実質手取りは配当金の90%となる。通常の課税口座では米国10%+日本20.315%の二重課税になるため、NISA口座を使うメリットは大きい。

目的別おすすめ――結局どれを買えばいい?

3本の特徴を踏まえて、投資目的別の選び方をまとめた。

投資目的おすすめETF理由
配当+値上がりのバランス重視VYM620銘柄の広い分散と過去最高のトータルリターン。経費率0.06%も最安
下落局面での安定性を優先HDVディフェンシブセクター中心で暴落耐性が高い。配当利回りも3%台と悪くない
とにかく配当金額を最大化したいSPYD利回り4%超は3本中トップ。ただし不動産偏重リスクと値動きの荒さは許容する必要あり
迷ったらまずこれVYM分散・リターン・コストのバランスが最も良い。初心者の1本目に適している

読者からよく聞かれるのが「3本に分散すればいいのでは?」という質問だ。悪くはないが、VYMとHDVは上位銘柄が被る(エクソンモービル、JPモルガンなど)ため、分散効果は限定的。むしろ「高配当ETF+インデックス投信(オルカンやS&P500)」の組み合わせのほうが、セクター・地域の分散が効きやすい。

ボーナス全額を1本に集中させるのが不安なら、たとえば「成長投資枠でVYMを30万円分+つみたて投資枠でオルカン月3万円」のように、枠を使い分けるのも現実的な選択肢だ。

FAQ

VYM・HDV・SPYDは新NISAのつみたて投資枠で買える?

買えない。つみたて投資枠の対象は金融庁が指定した投資信託のみで、海外ETFは対象外だ。VYM・HDV・SPYDを非課税で買うには成長投資枠を使う必要がある。

配当金にかかる税金はNISA口座なら完全にゼロ?

日本国内の課税(20.315%)は非課税になるが、米国での源泉徴収10%は免除されない。また、NISA口座では外国税額控除の確定申告ができないため、米国10%分は取り戻せない点に注意しよう。

ボーナスで一括購入と毎月積立、どちらがいい?

理論上はなるべく早く投資したほうがリターンが高い傾向にある(一括投資の優位性)。ただし、為替リスクもあるため、たとえば「ボーナスの半分を一括、残り半分を3〜6ヶ月に分けて購入」とする時間分散も合理的だ。正解は一つではない。

SPYDの利回りが高いのはなぜ?リスクはある?

S&P 500の中から配当利回り上位80銘柄を機械的に選ぶ仕組みのため、利回りが高くなりやすい。一方で、不動産セクターの比率が高く金利上昇局面で株価が下がりやすい。2022年にはVYMが約-3%だったのに対し、SPYDは約-15%下落した実績がある。利回りの裏にはリスクがある。

3本を組み合わせて持つのはあり?

可能だが、VYMとHDVは上位銘柄が重複するため分散効果は限定的だ。高配当ETFを複数持つよりも、「高配当ETF1本+インデックス投信(オルカン等)」の組み合わせのほうがセクター・地域の分散が効きやすい。

参考文献