2027年1月から、新NISAの非課税枠が「売却した年に復活する」ルールに変わる。これまでは売った翌年にしか枠が戻らなかったため、利確と再投資のタイミングに制約があった。この改正で、含み益がある人の出口戦略は大きく変わる。

編集部で実際にシミュレーションを回してみたところ、含み益100万円以上のケースでは年間20万円超の税制メリットが出た。この記事では、改正の具体的な中身と、利確→再投資の判断フローを実数字で整理する。

現行ルールと2027年改正の違い|非課税枠の復活タイミングが変わる

まず、現行ルール(2024〜2026年)の確認から入る。新NISAで保有する投資信託や株式を売却すると、その分の非課税枠(簿価ベース)は翌年1月に復活する仕組みだ。つまり、2026年中に売っても、その枠を再利用できるのは2027年1月以降になる。

2027年1月施行の改正では、この復活タイミングが「売却した年の中で即復活」に変わる。金融庁が2025年8月に公表した「NISA制度の見直しについて」の方針に基づくもので、2026年度税制改正大綱に盛り込まれた。

具体的な変更点を整理する。

項目現行(〜2026年12月)改正後(2027年1月〜)
売却枠の復活時期翌年1月売却した年の中で復活
年間投資枠(つみたて)120万円120万円(変更なし)
年間投資枠(成長投資枠)240万円240万円(変更なし)
生涯投資枠1,800万円(簿価)1,800万円(変更なし)
同一年内の利確→再投資不可(枠が戻らない)可能(枠が即復活)

年間投資枠や生涯投資枠の上限額自体は変わらない。変わるのは「枠の回転速度」だ。この違いが、含み益を持つ投資家の行動を大きく変える。

含み益がある人の利確→再投資シミュレーション|税制メリットを試算

改正後のルールを使って「利確して再投資する」場合、どれくらいの税制メリットがあるか。具体的な数字で見ていく。

ケース:成長投資枠240万円で含み益80万円

たとえば、成長投資枠で240万円分の投資信託を保有し、時価が320万円(含み益80万円)になったとする。

特定口座(課税口座)で同じ利確をした場合:

  • 含み益80万円 × 税率20.315%(所得税15.315% + 住民税5%)= 約162,520円の課税

新NISA口座で利確した場合:

  • 含み益80万円 × 税率0% = 課税ゼロ
  • 改正後は売却した年に240万円の枠が復活 → すぐに別の銘柄(または同じ銘柄)に再投資できる

結論から言うと、含み益80万円の利確で約16.3万円の節税になる。含み益が大きいほど、このメリットは拡大する。

含み益の大きさ別・節税額の目安

含み益課税口座での税額(20.315%)NISA利確の節税額
30万円約60,945円約6.1万円
80万円約162,520円約16.3万円
150万円約304,725円約30.5万円
300万円約609,450円約60.9万円

生涯投資枠1,800万円をフルに使い、仮に平均含み益率が30%だとすると、含み益は540万円。課税口座なら約109.7万円の税金がかかる計算だ。NISAの非課税メリットの大きさが分かる。

利確すべきか判断するフローチャート|5つの判断基準

「枠が当年復活するなら、どんどん利確して回転させたほうがいいのか?」という疑問が出るが、答えは「場合による」だ。以下のフローで判断するとよい。

判断フロー:

  1. 含み益は出ているか? → 含み損なら利確メリットなし。そのまま保有が基本
  2. リバランスの必要があるか? → 資産配分が当初の計画から大きくズレている場合は、利確+再配分が合理的
  3. 乗り換え先の銘柄にメリットがあるか? → 同じ銘柄を売って即買い直すだけでは手数料分マイナス。信託報酬が安いファンドへの乗り換え等、具体的な改善がある場合に有効
  4. 年間投資枠の残りはあるか? → 枠が復活しても、その年の年間投資枠(つみたて120万+成長240万=計360万円)を超える再投資はできない点に注意
  5. 長期保有の複利効果を手放す合理的理由があるか? → インデックスファンドの長期積立であれば、頻繁な売買より保有継続が有利なケースが多い

要するに、「枠が回転するから」という理由だけで頻繁に売買するのは得策ではない。リバランスや銘柄乗り換えなど、明確な目的がある場合に限って、当年復活ルールが強力な武器になる。

2027年改正前にやっておくべき3つの準備

改正は2027年1月施行だが、2026年中にやっておくと得する準備がある。

1. 保有銘柄の含み益を棚卸しする

証券口座にログインして、NISA口座内の各銘柄の取得価額と現在価額を確認する。楽天証券SBI証券ならマイページの「保有商品一覧」で含み損益が一覧表示される。

棚卸しの目的は「2027年に入ったら利確→再投資すべき銘柄があるか」を事前に把握しておくことだ。

2. リバランス計画を立てる

たとえば「全世界株(オルカン)70%・国内債券30%」の配分で積み立てていたのに、株高で全世界株が85%まで膨らんでいるなら、2027年1月以降に一部利確して債券ファンドに振り替える計画が立てられる。

現行ルールでは売却した枠が翌年まで戻らないため、年内のリバランスは「枠を使い切る」リスクがあった。改正後はこの制約がなくなる。

3. 信託報酬の安いファンドへの乗り換えリストを作る

2024年以降、各運用会社の信託報酬引き下げ競争が激化している。たとえば、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の信託報酬は年0.05775%(2026年6月時点)まで下がった。

もし旧NISA時代から信託報酬が高めのファンドを保有しているなら、2027年以降に「利確→低コストファンドに乗り換え」が枠消費なしで実行できるようになる。乗り換え候補のファンドをリストアップしておくとスムーズだ。

注意点|当年復活ルールでもやってはいけないこと

当年復活ルールは便利だが、誤解すると損をする落とし穴もある。

年間投資枠の上限は変わらない

枠が復活しても、年間の投資上限(つみたて120万+成長240万=計360万円)は変わらない。「売って買って売って買って」を繰り返しても、その年に投資できる総額は360万円までだ。

生涯投資枠1,800万円も変わらない

簿価ベースで1,800万円の上限は維持される。枠が回転しやすくなるだけで、「1,800万円を超える投資ができる」わけではない。

短期売買は本末転倒

NISAの非課税メリットは、長期保有で複利効果を最大化してこそ活きる。「枠が回るから」と短期トレードを繰り返すと、売買コスト(投資信託の信託財産留保額やETFの売買手数料)で利益が削られる。金融庁もNISA制度の趣旨として「長期・積立・分散投資」を掲げている。

損益通算はNISA口座ではできない

NISA口座の損失は、特定口座や一般口座の利益と損益通算(赤字を他の所得から差し引く制度)できない。含み損のある銘柄を売却しても、税制上のメリットはない点に注意が必要だ。

FAQ

2027年より前に売却した分も当年復活の対象になる?

いいえ。2026年12月31日以前の売却分は現行ルール(翌年復活)が適用される。当年復活ルールは2027年1月1日以降の売却から適用される。

つみたて投資枠と成長投資枠のどちらも当年復活する?

はい。改正はNISA制度全体に適用されるため、つみたて投資枠・成長投資枠の両方が対象だ。ただし、各枠の年間上限(120万・240万)を超える再投資はできない。

利確して同じ銘柄をすぐ買い直すのは問題ない?

制度上は問題ない。ただし、同一銘柄の売却と購入を同日に行う場合、約定タイミングや受渡日の関係で意図通りにならないことがある。投資信託は約定日と受渡日にズレがあるため、証券会社のFAQで確認してから実行するのが安全だ。

iDeCoとの併用で注意することは?

iDeCoは60歳まで引き出し不可の制度であり、NISAの売却枠復活ルールとは無関係だ。両制度は独立して運用できる。併用戦略としては、NISAで流動性を確保しつつ、iDeCoで所得控除の節税メリットを取るのが基本線だ。

この改正で「利確→再投資」を検討すべき人はどんな人?

含み益が出ていて、かつリバランスや銘柄乗り換えの予定がある人。逆に、インデックスファンドを淡々と積み立てて長期保有する方針の人は、改正による影響は小さい。

参考文献