2026年6月、日銀の政策金利は0.75%に据え置かれているが、市場は次の利上げ(1.00%)を織り込み始めている。この金利環境の変化で、生活防衛資金の「置き場所」が大きく変わりつつある。

結論から言うと、2026年6月時点では、ネット銀行の1年もの定期預金の上位金利(年1.30〜1.45%)が、個人向け国債 変動10年の初回適用利率(年1.67%)を下回る。だが、固定5年(年1.89%)との比較や、中途解約の柔軟性を加味すると、単純に「国債一択」とは言い切れない。

この記事では、手取り月収別に「どこに・いくら・どの期間で預けるか」を判断するフローを整理した。

2026年6月時点の金利比較|定期預金 vs 個人向け国債

まず、2026年5月〜6月募集分の個人向け国債と、主要ネット銀行の定期預金金利を並べて比較する。

個人向け国債(2026年6月発行分)

商品金利(税引前)金利(税引後)期間
変動10年(第194回)年1.67%年1.331%10年(半年ごと金利見直し)
固定5年年1.89%年1.506%5年
固定3年年1.57%年1.251%3年

出典: 財務省 個人向け国債 発行条件(2026年5月募集分、発行日6月15日)

主要ネット銀行の1年もの定期預金金利

銀行商品名金利(税引前)条件
SBJ銀行はじめくん(新規限定)年1.40〜1.45%新規口座開設者のみ
SBI新生銀行スタートアップ円定期預金年1.30%新規口座開設者のみ
あおぞら銀行BANK The定期年0.90%常設・条件なし
UI銀行スーパー定期預金年0.70%常設・条件なし
SBI新生銀行パワーダイレクト円定期預金年0.70%既存顧客向け
東京スター銀行スターワン円定期プラス年1.01%(6ヶ月)インターネット限定
メガバンク各行スーパー定期年0.40%

出典: ダイヤモンド・ザイ 定期預金金利ランキング(2026年5月時点)、各銀行公式サイト

つまり、条件なしの常設商品同士で比較すると、個人向け国債 変動10年(1.67%)はネット銀行の定期預金(0.70〜0.90%)を大きく上回る。新規口座開設限定の優遇金利(1.30〜1.45%)ですら、国債の方が高い。これが「金利差の逆転」だ。

なぜ金利差が逆転したのか|日銀利上げサイクルの影響

2024年3月にマイナス金利を解除した日銀は、その後段階的に政策金利を引き上げ、2026年5月時点で0.75%に到達している。市場では2026年6月会合での追加利上げ(0.75%→1.00%)がメインシナリオとして織り込まれ始めた(野村證券レポート)。

個人向け国債 変動10年の利率は「基準金利×0.66」で算出されるため、長期金利(10年物国債利回り)の上昇がダイレクトに反映される。一方、ネット銀行の定期預金金利は銀行の資金調達コストや競争戦略で決まるため、政策金利の引き上げが金利に反映されるまでタイムラグがある。

結果として、国債の金利は市場連動で先に上昇し、定期預金の金利は後追いで緩やかに上がるという「逆転」が起きている。

固定5年が変動10年を上回る「もうひとつの逆転」

注目すべきは、固定5年(1.89%)が変動10年(1.67%)を上回っている点だ。通常、期間が長い方が金利は高くなるが、変動10年は「基準金利×0.66」という計算式で割り引かれるため、利上げ局面では固定5年の方が有利になるケースがある。

ただし、今後さらに利上げが進めば変動10年の金利は半年ごとに切り上がるため、「利上げが続くと読むなら変動10年」「金利はこの辺りで頭打ちと読むなら固定5年」という判断になる。

生活防衛資金はどこに置く?手取り別の判断フロー

生活防衛資金(生活費の3〜6ヶ月分)は「すぐに引き出せること」が最優先だ。ここを間違えると、いざという時に資金がロックされて困ることになる。

以下のフローチャートで、自分の状況に合った預け先を判断しよう。

ステップ1: 生活防衛資金の金額を決める

手取り月収最低ライン(3ヶ月分)安全ライン(6ヶ月分)
20万円60万円120万円
25万円75万円150万円
30万円90万円180万円
35万円105万円210万円
40万円120万円240万円

会社員なら3ヶ月分、フリーランスや個人事業主なら6ヶ月分が目安とされる。副業収入がある場合でも、本業の手取りベースで計算しておく方が安全だ。

ステップ2: 流動性で振り分ける

すぐ使うお金(生活費1ヶ月分)→ ネット銀行の普通預金に置く。金利は0.20〜0.35%程度だが、即日引き出し可能であることが最優先。

3ヶ月以内に使う可能性があるお金→ ネット銀行の定期預金(3ヶ月〜6ヶ月もの)。中途解約しても元本割れしない。ただし解約時の金利は普通預金並みに下がる点に注意。

半年以上使わないお金→ ここが個人向け国債の出番だ。変動10年は発行後1年経過すれば中途換金できる(直前2回分の利子相当額が差し引かれる)。1年以上使う予定のない資金なら、定期預金より国債の方が金利面で有利。

ステップ3: 配分の具体例(手取り25万円・会社員の場合)

用途金額預け先金利目安(税引前)
即時引出し用25万円ネット銀行 普通預金0.20〜0.35%
短期予備(2〜3ヶ月分)50万円ネット銀行 定期預金(6ヶ月)0.70〜1.01%
中期予備(残り)75万円個人向け国債 変動10年1.67%

この例では150万円(6ヶ月分)を3段階に振り分けている。ポイントは「全額を国債にしない」こと。国債は発行後1年間は中途換金できないため、直近で必要になる可能性のある資金は定期預金や普通預金に残しておく。

国債 vs 定期預金|100万円を預けた場合の利息シミュレーション

100万円を1年間預けた場合の税引後利息を比較する(税率20.315%で計算)。

預け先金利(税引前)1年後の税引後利息
個人向け国債 変動10年1.67%約13,307円
個人向け国債 固定5年1.89%約15,060円
SBJ銀行 はじめくん1.45%約11,554円
SBI新生銀行 スタートアップ1.30%約10,359円
あおぞら銀行 BANK The定期0.90%約7,172円
メガバンク スーパー定期0.40%約3,187円

個人向け国債 固定5年と、メガバンクの定期預金では、1年で約11,873円の差が出る。100万円でこの差なので、500万円なら約59,000円の差になる計算だ。

ただし、SBJ銀行やSBI新生銀行の新規限定金利は初回のみの適用が多い。2年目以降は通常金利に戻るため、長期で安定した利回りを求めるなら個人向け国債が有利という結論になる。

個人向け国債を選ぶときの注意点

金利だけ見ると国債一択に思えるが、以下のデメリットも理解しておこう。

1年間は中途換金できない

個人向け国債は発行後1年間、原則として中途換金ができない。急な出費に備える「生活防衛資金の全額」を国債に入れるのは避けるべきだ。

中途換金時のペナルティ

1年経過後に中途換金する場合、直前2回分(1年分)の利子相当額×0.79685が差し引かれる。つまり、発行後1年で換金すると、受け取った利子がほぼゼロになる計算だ。最低でも2年以上保有するつもりで購入しよう。

購入タイミングは毎月

個人向け国債は毎月募集される。2026年6月発行分の募集期間は5月14日〜5月29日、発行日は6月15日だ(財務省 現在募集中の個人向け国債)。証券会社や銀行の窓口、ネット証券で購入できる。

変動10年 vs 固定5年の選び方

野村證券のレポートでは、日銀は2026年中にあと2回の利上げ(6月・12月)を見込んでいる(野村證券 2026年5月レポート)。利上げが進めば変動10年の金利は半年ごとに上昇する可能性がある。一方、NRI木内氏は利上げ一時停止の可能性も指摘している(NRI コラム 2026年4月)。

要するに、「利上げ継続」と読むなら変動10年、「ここで打ち止め」と読むなら固定5年だ。迷ったら変動10年を選んでおけば、金利上昇の恩恵を受けられる。

今すぐできるアクション|3ステップで始める最適配分

記事を読んだだけでは何も変わらない。以下の3ステップを今日中にやってしまおう。

ステップ1: 生活防衛資金の総額を計算する

手取り月収×3ヶ月(会社員)or ×6ヶ月(フリーランス)。現在の預金残高と照らし合わせて、生活防衛資金として確保する金額を決める。

ステップ2: 3段階に振り分ける

即時引出し用(普通預金)、短期予備(定期預金)、中期予備(個人向け国債)の3つに分ける。上で示した手取り25万円の例を参考に、自分の金額に当てはめよう。

ステップ3: 証券口座で国債を購入する

楽天証券・SBI証券・マネックス証券などのネット証券で購入できる。口座開設がまだなら、NISA口座と合わせて開設しておくと今後の資産運用にも使える。なお、個人向け国債はNISA口座では購入できない(課税口座での購入となる)点に注意。

FAQ

個人向け国債は元本割れしない?

個人向け国債は国が元本を保証しているため、満期まで保有すれば元本割れはしません。中途換金時もペナルティは利子相当額の一部のみで、元本は全額戻ります。

ネット銀行の定期預金と国債、どちらが安全?

定期預金は預金保険制度により1金融機関あたり元本1,000万円とその利息が保護されます。国債は国の信用で保証されます。安全性はどちらも高いですが、1,000万円を超える資金なら国債の方が保護範囲に上限がない分、安心です。

定期預金の金利は今後さらに上がる?

日銀の利上げが続けば、定期預金の金利も追随して上昇する可能性があります。ただし、銀行の金利改定は政策金利の引き上げから数ヶ月遅れる傾向があるため、「金利が上がるまで待つ」より、今の時点で国債を購入しておく方が機会損失を防げます。

変動10年を買った後に金利が下がったらどうなる?

変動10年は半年ごとに金利が見直されますが、最低金利保証(年0.05%)があります。仮に金利が下がっても元本割れはしません。ただし、受け取る利子は減少します。

副業収入がある場合、国債の利子は確定申告が必要?

個人向け国債の利子は源泉分離課税(20.315%)で自動的に税金が差し引かれるため、確定申告は不要です。副業の確定申告とは別扱いになります。

参考文献