2009年にスタートした住宅用太陽光の固定価格買取制度(FIT)は、10年間の買取期間が満了すると「卒FIT」となる。2019年11月に最初の大量卒FIT世帯が発生し、2026年5月現在も毎年数十万件ペースで卒FIT世帯は増え続けている。

問題は、卒FIT後の売電単価が大幅に下がること。たとえば2009年度にFIT認定を受けた家庭は48円/kWhで売電できていたが、卒FIT後は大手電力の自動継続プランで7〜9円/kWh程度まで下落する(資源エネルギー庁 FIT・FIP制度)。つまり、何も手を打たなければ年間数万円の損失が出ている状態だ。

筆者自身、三児の子育てで光熱費が家計の大きなウェイトを占めてきた。固定費の見直しは物販時代に在庫管理コストで痛い目を見てから徹底するようになったが、電力契約もまさに「放置コスト」の典型だと気づいた。

この記事では、卒FIT後のまま放置していた家庭が買電プランと売電契約を切り替えて年間約6万円を削減できた実数字と、比較シミュレーターの使い方を解説する。

卒FITとは? 売電単価はどこまで下がるのか

FIT(固定価格買取制度)は、住宅用太陽光発電(10kW未満)の余剰電力を、国が定めた固定価格で10年間買い取る制度だ。制度開始の2009年度は48円/kWh、その後年々引き下げられ、2025年度の新規認定は15円/kWhとなっている(資源エネルギー庁 買取価格・期間等)。

10年の買取期間が終了すると、各地域の大手電力会社が設定する「卒FIT向け買取プラン」に自動移行するケースが多い。2026年5月時点の主要電力会社の卒FIT買取単価は以下のとおりだ。

電力会社卒FIT買取単価(2026年5月時点)
東京電力EP8.50円/kWh
関西電力8.00円/kWh
中部電力ミライズ7.00円/kWh
九州電力7.00円/kWh
東北電力9.00円/kWh

結論から言うと、大手電力の自動継続プランは最低水準に近い。新電力やガス会社の卒FIT買取プランに切り替えるだけで、売電単価を2〜5円/kWh上乗せできるケースがある。

年6万円削減の内訳|売電切り替え+買電プラン最適化

ここでは、関東在住・4人家族・太陽光パネル4.5kW・年間発電量4,800kWh・自家消費率30%という条件でシミュレーションした結果を示す。

売電契約の見直し: +約2.4万円/年

余剰電力は年間約3,360kWh(発電量4,800kWh × 余剰率70%)。東京電力EPの卒FIT買取(8.50円/kWh)から、新電力の卒FIT買取プラン(15.00円/kWh)に切り替えた場合を計算する。

  • 切り替え前: 3,360kWh × 8.50円 = 28,560円/年
  • 切り替え後: 3,360kWh × 15.00円 = 50,400円/年
  • 差額: +21,840円/年

2026年5月時点で卒FIT買取単価が高い新電力プランの例を挙げる(各社公式サイト情報)。

事業者プラン名買取単価条件
Looopでんき卒FIT買取12.00円/kWh買電もLooopに契約
エネオスでんきENEOS太陽光買取11.00円/kWhENEOSでんき利用者
スマートテックスマートFIT13.00〜16.00円/kWh蓄電池セット等で加算
シェルでんき卒FITプラン12.00円/kWh買電もセット

注意点として、高単価プランには「買電もセットで契約」「蓄電池導入が条件」などの縛りがあるケースが多い。買電側の単価も合わせて総額で比較することが重要だ。

買電プランの見直し: +約3.6万円/年

太陽光がある家庭は日中の電力消費が少なく、夜間〜早朝に使用が集中しやすい。そのため、時間帯別料金プラン(夜間割安型)との相性が良い。

東京電力EPの従量電灯B(平均30円/kWh想定)から、夜間割安型プラン(夜間18円/kWh・昼間32円/kWh)に切り替え、エコキュートの沸き上げ時間を太陽光の発電時間帯にシフトした場合のシミュレーション結果を示す。

  • 年間買電量: 約5,400kWh(自家消費分を差し引いた残り)
  • 従量電灯B: 5,400kWh × 約30円 = 162,000円/年
  • 時間帯別プラン + エコキュート昼運転: 実質平均単価 約23.5円/kWh → 5,400kWh × 23.5円 = 126,900円/年
  • 差額: −35,100円/年

売電改善(+21,840円)と買電改善(−35,100円)を合計すると、年間約56,940円の削減となる。さらにエコキュートの沸き上げ時間帯最適化を加えると年6万円前後の削減が十分に射程に入る。

蓄電池導入で自家消費率を上げる選択肢

さらに踏み込んだ削減策として、家庭用蓄電池の導入がある。日中の余剰電力を蓄電池に貯めて夜間に使えば、自家消費率を30%から60〜80%に引き上げられる。

2026年5月時点の家庭用蓄電池の価格帯と補助金を整理する。

蓄電池容量本体+工事費の目安(税込)国の補助金(2025年度DER実証事業)
5〜7kWh100〜150万円最大60万円
10〜12kWh150〜220万円最大60万円
15kWh以上200〜300万円最大60万円

補助金の詳細は一般社団法人 環境共創イニシアチブ(SII)の公式サイトで最新の公募要領を確認してほしい。自治体独自の補助金も上乗せできるケースが多く、東京都では東京都環境局が最大120万円の補助を実施している(2025年度実績)。

ただし、蓄電池は初期投資が大きいため、回収期間は補助金ありでも8〜12年が現実的だ。「元が取れるか」だけで判断するなら、まずは売電・買電の契約見直し(初期費用ゼロ)を優先し、蓄電池は補助金の条件が合うときに検討するのが堅実なステップだ。

エコキュートの設定見直しで追加削減

エコキュートを導入済みの家庭なら、沸き上げ時間帯の変更だけで電気代をさらに年間1〜2万円下げられる可能性がある。

従来のエコキュートは「夜間電力が安い」前提で深夜に沸き上げを行う設定がデフォルトだ。しかし卒FIT家庭では、日中に太陽光の余剰電力が発生している。これを使って昼間に沸き上げれば、実質0円で給湯できる。

主要メーカーの対応状況(2026年5月時点):

  • パナソニック: 「おひさまソーラーチャージ」機能で太陽光連携。HEMSとの接続で自動制御(パナソニック エコキュート公式
  • 三菱電機: 「お天気リンクAI」で翌日の天気予報から沸き上げ時間を自動最適化
  • ダイキン: 「昼間シフト機能」で太陽光余剰時間帯に沸き上げを手動設定可能

旧型のエコキュートでも、リモコンの「沸き上げ時間帯設定」を手動で昼間に変更するだけで効果がある。取扱説明書で「沸き上げ開始時刻」の設定方法を確認してみよう。

比較シミュレーターの使い方|3ステップで最適プランを見つける

「自分の家ではいくら削減できるのか」を把握するには、比較シミュレーターが便利だ。以下の3ステップで最適な組み合わせを見つけよう。

ステップ1: 現在の電力使用量を把握する

各電力会社のマイページ(東京電力なら「くらしTEPCO web」、関西電力なら「はぴeみる電」)で、過去12ヶ月の月別使用量(kWh)と電気代を確認する。太陽光の発電量・売電量は、パワコンのモニターやHEMSアプリで取得できる。

ステップ2: 一括比較サイトで売電・買電プランを比較する

以下のシミュレーターに使用量データを入力して比較する。

  • エネチェンジ — 買電プランの比較に強い。卒FIT売電プランの比較機能もあり
  • セレクトラ — 電力・ガスの一括比較。料金シミュレーション機能あり

比較時のチェックポイント:

  • 売電単価だけでなく、買電単価とのセット料金で総額比較する
  • 契約期間の縛り・解約金の有無
  • 再エネ賦課金(2025年度: 3.49円/kWh)は全プラン共通で上乗せされるため、比較対象外
  • 燃料費調整額の上限有無(上限なしプランは電力市場高騰時にリスクあり)

ステップ3: 蓄電池の費用対効果を試算する

蓄電池の導入を検討するなら、年間の余剰電力量 × (買電単価 − 売電単価)で「蓄電池に貯めて自家消費した場合の年間メリット額」を計算する。

例: 余剰電力3,360kWh、自家消費シフト可能量を50%(1,680kWh)と仮定した場合:

  • 買電回避額: 1,680kWh × 30円 = 50,400円
  • 売電喪失額: 1,680kWh × 15円 = 25,200円
  • 蓄電池の年間メリット: 50,400 − 25,200 = 25,200円/年
  • 蓄電池コスト150万円 − 補助金60万円 = 実質90万円 → 回収期間: 約36年

この例では蓄電池単体の経済性は厳しい。ただし売電単価が7〜8円の大手電力プランのままなら買電回避メリットが大きくなり、回収期間は15〜18年まで短縮される。災害時のバックアップ電源としての価値も含めて判断することになる。

FAQ

卒FIT後、何もしなければどうなる?

多くの場合、地域の大手電力会社の卒FIT買取プラン(7〜9円/kWh)に自動移行する。売電収入が大幅に下がるだけで、電力供給が止まることはない。ただし放置期間が長いほど機会損失は大きくなる。

売電先の切り替えに費用はかかる?

ほとんどの新電力では売電先の切り替えに手数料はかからない。手続きはWeb申込で完結し、切り替えまでの期間は2週間〜1ヶ月程度。工事の立ち会いも不要なケースが大半だ。

新電力が倒産したら売電できなくなる?

新電力が撤退・倒産した場合は、地域の大手電力会社の卒FIT買取プランに自動的に戻る仕組みになっている(経過措置)。売電そのものができなくなることはないが、切り替え手続きの手間が発生する。

エコキュートの昼間沸き上げはお湯切れしない?

タンク容量370L以上のエコキュートであれば、昼間に沸き上げて夜間〜翌朝まで使っても4人家族で十分足りる。天候不良で太陽光の発電量が少ない日は、従来どおり深夜電力で沸き上げるハイブリッド運用が安心だ。

蓄電池の補助金はいつまで使える?

国の補助金(DER実証事業等)は年度ごとの予算制で、例年秋頃に予算上限に達して募集終了となる。2026年度の公募開始は未発表(2026年5月時点)。自治体補助金も同様に先着順が多いため、検討中なら早めに各自治体の窓口を確認しよう。

参考文献