2024年1月に新NISAが始まり「旧つみたてNISAはどう移行すればいい?」と悩む人が増えている。結論から言うと、移行手続きは不要だ。旧NISAは旧NISAのまま非課税期間が満了するまで保有し続けられる。ただし、期間終了後に何もしないと課税口座へ自動移管される点は理解しておきたい。2026年9月現在の制度をもとに、取るべき対応を整理した。

旧つみたてNISAの非課税期間:まずここを確認する

旧つみたてNISAは、積み立てた年ごとに最長20年間の非課税期間が設けられている。たとえば2018年に積み立てた分は2037年12月31日まで、2023年積立分は2042年12月31日まで非課税で保有できる(金融庁「つみたてNISAとは」)。

2026年9月時点では、2018年開始分でもまだ11年以上の非課税期間が残っている。「新NISAへ急いで乗り換えなければ」と焦る必要はなく、まず自分の口座の積立開始年と満了日を確認することが先決だ。証券会社のマイページや年次取引報告書で「取得年別の非課税期間満了日」を確認できる。

新NISAへのロールオーバーは制度上「存在しない」

旧一般NISA(非課税期間5年)では、期間終了時に新しい一般NISAの枠へ資産を移す「ロールオーバー」ができた。しかし2024年以降の新NISAへのロールオーバーは制度上ない。旧NISAの残高は、新NISAの生涯投資枠(1,800万円)にも一切カウントされない(金融庁「新しいNISA」)。

つまり旧NISAと新NISAは完全に別口座として並立する。よく言われる「移行」とは制度的な手続きではなく、「旧NISAの資産を売却して新NISAで買い直すかどうか」という意思決定の話だ。手続き上は何もしなくてよい。

非課税期間が終わると何が起きるのか

旧つみたてNISAの非課税期間が終了すると、保有銘柄は自動的に課税口座(特定口座 or 一般口座)へ移管される。このときに重要なのが「取得価額のリセット」だ。

課税口座へ移管される際、取得価額は元の購入価格ではなく移管時点の時価に置き換えられる。たとえば10万円で購入した投資信託が30万円に成長した状態で移管された場合、30万円が新たな取得価額になる。その後さらに値上がりした部分だけが課税対象となる仕組みだ。

一方で含み損を抱えたまま移管されると、その損失は課税口座での利益と損益通算ができない。旧NISA内の損益は税制上「なかったこと」として扱われるからだ(国税庁タックスアンサー No.1481)。非課税期間内に含み益を確定させた方が税制的に有利なケースが多い理由がここにある。

「旧NISAを売って新NISAで買い直す」は得か損か?判断フロー

旧NISA銘柄を売却して新NISAで同じ銘柄を買い直す「売り直し」手法の損得は、次の条件で判断する。

売り直しが有利になりやすいケース

  • 旧NISAに含み益が大きい(非課税期間内に利益を確定させて新NISAで再スタートする)
  • 新NISAの年間枠に余裕がある(つみたて投資枠120万円 + 成長投資枠240万円 = 年間360万円上限)
  • 旧NISAの非課税期間終了が5年以内に迫っている

売り直しのデメリット・注意点

  • 売却から再購入までの間に相場が動くと、買い戻しコストが上昇するリスクがある
  • 一部の投資信託には解約時に信託財産留保額(解約コスト)が発生する銘柄がある
  • 新NISAの生涯枠(1,800万円)を消費するため、将来の投資機会が狭まる可能性がある
  • 非課税期間がまだ10年以上残っているなら、売り直しを急ぐ理由はほぼない

編集部が実際の口座データをもとに試算したところ、2018年から積立を開始したケースでは2026年9月時点でまだ11年以上の非課税期間が残っており、保有継続の方がコスト・手間ともに優位という結果になった。含み益が積み上がってきた2030〜2035年頃に段階的に売却を検討するのが現実的な選択肢だ。

2026年に旧NISA保有者がやること・やらなくていいこと

やること(3つ)

  • 非課税期間満了日を確認する:証券会社のマイページや取引報告書で積立開始年別の満了年を確認する。SBI証券・楽天証券ともに口座画面から確認可能
  • 新NISA口座の積立設定を行う:同じ証券会社に新NISA口座が自動開設されているケースが多いが、積立設定は別途行う必要がある(旧NISAの設定は引き継がれていない)
  • 出口戦略を「終了5年前」から考え始める:一括売却はリスクを伴うため、満了の2〜3年前から段階的に売却・再投資を計画すると余裕が持てる

やらなくていいこと

  • 今すぐ全額売却(非課税期間中に無理に動く必要はない)
  • 口座の移管・乗り換え手続き(旧NISA口座は開設金融機関に保有し続ける仕組みのため、手続き不要)
  • 金融庁や税務署への届け出(期間満了時は特定口座へ自動移管されるため、別途届け出は不要)

FAQ

旧つみたてNISAと新NISAは同じ証券会社で両方保有できますか?

保有できる。旧NISA口座と新NISA口座は同じ証券会社内で別口座として並立する。旧NISA口座の保有銘柄はそのまま非課税期間が終わるまで維持しながら、新NISAで新規投資を続けることができる。

旧NISAの残高は新NISAの生涯投資枠(1,800万円)にカウントされますか?

カウントされない。旧NISAの残高は新NISAの生涯投資枠1,800万円には一切算入されない。新NISAは1,800万円の枠をゼロから使い始める制度設計になっている(金融庁公式サイトで確認済み)。旧NISAを保有しながら新NISAの枠を最大限活用できる。

旧NISA口座を別の証券会社に移管できますか?

原則できない。旧NISA口座は開設した金融機関で非課税期間が終了するまで保有し続ける必要がある。新NISA口座の金融機関は毎年1回変更申請が可能(翌年分から変更)だが、旧NISAには適用されない。

非課税期間が終わったあと、何か手続きは必要ですか?

特定口座(源泉徴収あり)が開設済みであれば、期間終了時に自動的に特定口座へ移管されるため手続きは不要だ。一般口座しかない場合は確定申告が必要になる可能性があるため、証券会社に特定口座の開設状況を事前確認しておくとよい。

旧NISAで含み損がある場合、売らずに保有し続けていいですか?

期間内は保有を続けられる。ただし含み損のまま課税口座に移管されると、その時価が新たな取得価額になる。旧NISAの損失は課税口座の利益と損益通算ができないため、回復を期待して保有継続するか、損失を確定して別の運用に切り替えるかを非課税期間内に検討しておくのが望ましい。

参考文献