2024年1月に始まった新NISAで積立を開始した人は、2026年半ばで約2年半が経過した。「ほったらかしでいい」と聞いて始めたものの、気づけば当初の資産配分から比率がズレている――そんな状態に心当たりはないだろうか。
結論から言うと、年に1回の資産配分チェックは「やるべき」だ。ただし、新NISAには非課税枠という特殊な制約がある。やみくもに売買するとかえって損をする場合もある。この記事では、リバランスが必要かどうかの判断基準と、非課税枠を無駄にしない具体的な調整方法を整理した。
編集部でも実際に2024年1月から積立を続けているが、2026年6月時点で株式比率が当初の70%から約78%まで上振れしていた。放置していても大きな問題にはなっていなかったが、確認して初めて「思ったよりズレてるな」と実感したのが正直なところだ。
そもそもリバランスとは何か
リバランスとは、運用中のポートフォリオが目標とする資産配分(アセットアロケーション)からズレたとき、売買や積立配分の変更によって元の比率に戻す作業のことだ。
たとえば「株式70%:債券30%」で始めた人が、株式市場の上昇によって「株式80%:債券20%」になっていたとする。この状態は、当初想定したリスク水準より高いリスクを取っていることになる。リバランスによって元の比率に戻すことで、リスクを一定に保つことができる。
三菱UFJ信託銀行のコラムでも解説されている通り、リバランスは「値上がりした資産を一部売って、値下がりした資産を買い増す」行為であり、結果的に「高く売って安く買う」効果が期待できる。
リバランスが必要かどうかの判断基準
「いつリバランスすればいいのか」は、以下の2つのアプローチで判断できる。
方法1:乖離率5%ルール
目標比率からの乖離が5%ポイント以上になったらリバランスを実施するという考え方だ。たとえば株式の目標が70%なら、75%以上または65%以下になった時点で調整する。
この方法は相場の動きに応じて柔軟に対応できるメリットがある。ただし、日常的にポートフォリオを確認する手間が発生する。
方法2:定期リバランス(年1回)
毎年決まった時期(1月や12月など)にポートフォリオを確認し、ズレがあれば調整する方法だ。PRESIDENT Onlineでも「年1回の確認は鉄則」と紹介されている。
初心者には年1回の定期リバランスが現実的だ。毎月チェックする習慣がなくても、年末年始や誕生月など覚えやすいタイミングを決めておけばよい。
判断のフローチャート
つまり、以下の順序で考えるとシンプルだ。
- 現在の資産配分を確認する(証券会社のマイページで確認可能)
- 目標配分との乖離が5%ポイント以上あるか?
- 5%未満 → 今回は見送りでOK
- 5%以上 → 次のセクションの方法で調整を検討
新NISAでリバランスする3つの方法
新NISAの非課税枠は生涯で1,800万円(うちつみたて投資枠1,200万円、成長投資枠1,200万円)。2026年6月時点では、売却した分の非課税枠は「翌年1月」に復活するルールだ。この点を踏まえ、方法を3つ紹介する。
方法1:積立配分の変更(ノーセルリバランス)
最も推奨される方法がこれだ。保有資産を売却せず、今後の積立配分を変更することで、徐々に目標比率に戻していく。
具体例を挙げよう。株式ファンド70%:債券ファンド30%が目標で、現状が株式78%:債券22%の場合、今後の毎月の積立を「株式50%:債券50%」に変更する。数ヶ月かけて比率が目標に近づいていく。
メリット
- 非課税枠を消費しない
- 売買手数料がかからない(投資信託の場合)
- 含み益を確定させず複利効果を維持できる
デメリット
- 目標比率に戻るまで数ヶ月〜半年かかる場合がある
- 乖離が大きい場合は積立配分だけでは追いつかないことがある
方法2:成長投資枠で追加購入
比率が低い資産クラスを成長投資枠でスポット購入する方法だ。つみたて投資枠の月10万円(年120万円)に加え、成長投資枠の年240万円を使って一括で買い増す。
フィデリティ証券も、つみたて投資枠と成長投資枠の併用によるリバランスを推奨している。積立はつみたて投資枠で継続し、リバランス用の追加購入は成長投資枠で行うという使い分けだ。
方法3:売却して買い直す(従来型リバランス)
比率が高くなった資産を売却し、低い資産を買い増す従来型の方法だ。ただし、新NISAでは以下の注意が必要になる。
- 売却した分の非課税枠は2026年時点では翌年1月まで復活しない(年内に売って年内に買い直すと、その分だけ枠を二重に消費する)
- 含み益がある場合、非課税のまま売却できるのはメリットだが、枠の消費というコストがある
- 含み損がある場合、NISA口座の損失は他の所得と損益通算(赤字を他の所得から差し引く制度)ができない
結論から言うと、非課税枠にまだ余裕がある2年目の段階では、方法1(積立配分変更)か方法2(成長投資枠での追加購入)を優先すべきだ。売却は枠を使い切った後か、大幅な乖離(10%ポイント超)が生じた場合の最終手段と考えよう。
2026年度税制改正で変わること
2025年12月に決定された令和8年度(2026年度)税制改正大綱で、リバランスに関係する重要な変更が盛り込まれた。金融庁の公表資料によると、主な変更点は以下の通りだ。
売却枠の復活タイミングが「翌年」→「当年中」に
現行制度では、NISA口座で保有する商品を売却した場合、その商品の簿価(購入時の金額)分の非課税枠が復活するのは「翌年1月」だった。2027年1月施行予定の改正により、売却した当年中に枠が復活する仕組みに変わる。
これが実現すると、年内に売却→年内に別商品を購入という従来型リバランスが、枠を二重消費せずに行えるようになる。つまり、2027年以降はリバランスの自由度が大きく上がる。
ただし、2026年中はまだ現行ルール(翌年復活)が適用される。今すぐリバランスを検討している人は、現行ルールを前提に判断しよう。
こどもNISAの新設
年間投資額60万円・非課税保有限度額600万円の未成年向けNISAが新設される。家族全体の資産配分を考える際に関係してくるが、リバランスの文脈では直接影響しない。
リバランス時にやってはいけないこと
リバランスは「やりすぎ」も禁物だ。以下の失敗パターンに注意しよう。
毎月リバランスする
頻繁なリバランスは売買コストを増やし、複利効果を損なう。東証マネ部の検証記事でも、リバランス頻度が高すぎるとリターンが低下するケースが確認されている。年1〜2回で十分だ。
相場を見てタイミングを計る
「もう少し下がってから買おう」「もう少し上がったら売ろう」と考え始めると、リバランスではなく投機になる。機械的に実行することがポイントだ。
目標配分を決めずに始める
そもそも「株式何%:債券何%」という目標が明確でないと、リバランスのしようがない。まだ決めていない人は、まず目標配分を設定することが先決だ。
目安として「120の法則」がある。「リスク資産の比率 = 120 − 自分の年齢」で計算する方法で、30歳なら株式90%、40歳なら株式80%、50歳なら株式70%が目安になる。あくまで出発点であり、リスク許容度(生活防衛資金の有無・家族構成・収入の安定性)に応じて調整しよう。
含み損の状態で売却する
NISA口座で発生した損失は、特定口座や一般口座の利益と損益通算できない。含み損のまま売却すると、損失が確定するだけでメリットがない。含み損の資産はそのまま保有し、積立配分の変更で対応するのが得策だ。
2年目の今チェックすべき3つのポイント
最後に、新NISA2年目の今だからこそ確認しておきたいポイントを3つにまとめた。
1. 資産配分の現状確認
証券会社のマイページで、現在のポートフォリオ比率を確認する。SBI証券・楽天証券・マネックス証券いずれも「資産状況」「ポートフォリオ」画面から確認できる。目標比率との乖離が5%ポイント以上あれば、積立配分の見直しを検討しよう。
2. リスク許容度の変化
2024年に積立を始めてから、生活環境が変わっていないか振り返ろう。転職・結婚・出産・住宅購入などがあった場合、リスク許容度が変わっている可能性がある。必要に応じて目標配分そのものを見直す。
3. 積立額・銘柄の再確認
2024年に設定した積立額が、現在の家計に合っているかも確認しておきたい。昇給やボーナスの変化に合わせて積立額を増減するのも、広い意味でのリバランスだ。また、新たに信託報酬が安い商品が出ていないか(例: eMAXIS Slimシリーズの信託報酬引き下げなど)もチェックしておくとよい。
FAQ
新NISAでリバランスのために売却すると非課税枠はどうなる?
2026年時点では、売却した商品の簿価分の非課税枠が「翌年1月」に復活します。年内に売って年内に買い直すと枠を二重消費するため、売却以外の方法(積立配分変更・成長投資枠での追加購入)を優先しましょう。2027年からは当年中に復活する改正が施行予定です。
オルカン1本で積立している場合もリバランスは必要?
オルカン(全世界株式)1本だけの場合、ファンド内部で自動的にリバランスされるため、ファンド間の比率調整は不要です。ただし、リスク資産(株式)と無リスク資産(預金・債券)の比率は自分で管理する必要があります。
リバランスの計算方法は?
「総評価額 × 目標比率 = 各資産の目標金額」で算出します。例:総額300万円、目標が株式70%なら株式の目標金額は210万円。現在の株式評価額が240万円なら、30万円分を債券に振り向ける計算です。
バランスファンドを買っていればリバランス不要?
ファンド内部で自動リバランスされるため、原則不要です。ただし、バランスファンド以外にも個別に投資信託を保有している場合は、全体のポートフォリオで見たときに比率がズレる可能性があります。
つみたて投資枠と成長投資枠で別々のファンドを買っている場合は?
両枠を合算したポートフォリオ全体で目標配分と比較してください。証券会社によっては枠別にしか表示されない場合があるため、自分で合計を計算する必要があります。
参考文献
- NISAを利用する皆さまへ — 金融庁, 2024年6月
- 令和8年度税制改正について — 金融庁, 2025年12月
- 新NISAを効果的に活用する3つのポイント — フィデリティ証券
- 資産運用で定期的なリバランスは意味ある? — 東証マネ部!
- 正直FPが正直に語る「NISAでのリバランスは必要ない」 — 東証マネ部!
- 新NISAにおけるリバランスの方法とは — 1級FP技能士鬼塚祐一
- NISAの注意点を踏まえた投資商品の選び方 — 三菱UFJ信託銀行