2026年夏、政府が正式決定する見込みの「新金融戦略」で、家計金融資産に占める株式・投資信託・債券の比率を2040年までに40%へ引き上げるという数値目標が盛り込まれた。2025年3月末時点でこの比率は約22%。つまり、今の倍にするという話だ。

「投資しろと言われても何から始めれば……」という人は多いはずだ。編集部でも実際に投資未経験のスタッフが新NISAを開設してみたが、証券口座の選び方ひとつで迷って3週間かかった。この記事では、政府の新目標の中身を整理した上で、投資未経験者が今日から動ける3ステップを具体的に解説する。

政府「新金融戦略」の中身──家計資産の4割を投資へ

2026年6月、日本経済新聞などが報じた政府の新金融戦略の原案では、家計金融資産に占める株式・投資信託・債券のシェアを「2040年までに40%」に引き上げる目標が示された(日本経済新聞, 2026年6月)。

具体的なポイントは以下の3つだ。

  • 数値目標: 家計金融資産の株式・投信・債券比率を現在の約22%から40%へ(約2倍)
  • 達成時期: 2040年
  • 主な施策: 新NISAの普及促進、こどもNISA(こども支援NISA)の創設、個人向け国債の購入促進、社債市場の活性化

この戦略は2026年夏に正式決定される見込みで、石破内閣が掲げる「投資立国」「資産運用立国」政策の延長線上にある(首相官邸)。

日本の家計資産構成の現状──現預金が約48%、投資は22%

日本銀行の資金循環統計(2026年第1四半期速報)によると、2026年3月末時点の家計金融資産は約2,386兆円で過去最高を更新した。

その内訳は以下のとおりだ。

資産区分金額(概算)構成比
現金・預金約1,126兆円約47%
保険・年金約575兆円約24%
株式等約342兆円約14%
投資信託約165兆円約7%
債券その他約178兆円約8%

株式+投資信託+債券を合計すると約22%。政府目標の40%とは約18ポイントの差がある。金額にして約430兆円分を新たに投資に振り向ける計算だ。

ただし、明るい兆候もある。2025年6月末に家計の現預金比率が18年ぶりに50%を割り込み、2026年3月末には47%まで低下した(日本経済新聞, 2025年12月)。新NISA開始以降、「貯蓄から投資へ」の流れは確実に動き始めている。

初心者がやるべき3つのこと──新NISAで始める資産形成ステップ

結論から言うと、投資未経験者がまずやるべきことは以下の3つだ。難しいことは一切ない。

ステップ1: ネット証券で新NISA口座を開設する

新NISAは2024年1月にスタートした制度で、投資の利益(値上がり益・配当)に税金がかからない。通常なら約20%かかる税金がゼロになるので、使わない理由がない。

口座開設はネット証券が手数料面で有利だ。主要な選択肢は以下の2つ。

  • 楽天証券 ── 楽天カード積立で最大1%ポイント還元。楽天経済圏の人向き
  • SBI証券 ── 三井住友カード積立でVポイント還元。投信の品揃え最多

申し込みから口座開設まで最短で翌営業日〜2週間。マイナンバーカードがあればオンライン完結できる。

ステップ2: つみたて投資枠で月1万円から積立を始める

新NISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つがある(金融庁 NISA特設サイト)。

年間上限対象商品特徴
つみたて投資枠120万円/年金融庁が選定した投資信託・ETF長期・分散・積立に適した商品のみ
成長投資枠240万円/年上場株式・投資信託など幅広い個別株やアクティブファンドもOK

生涯の非課税保有限度額は合計1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで)。売却すれば翌年以降に枠が復活する仕組みだ。

初心者はまずつみたて投資枠で月1万円からスタートするのが現実的だ。月1万円なら年間12万円、15年続けても180万円で1,800万円の枠には余裕がある。慣れてきたら月3万円、5万円と増やせばいい。

ステップ3: 全世界株式インデックスファンド1本で十分

「何を買えばいいかわからない」──これが最大のハードルだが、答えはシンプルだ。

全世界株式インデックスファンド(通称オルカン)を1本だけ積み立てる。これで世界約50カ国・約3,000銘柄に分散投資できる。

代表的な商品は以下の2つだ。

  • eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) ── 信託報酬 年0.05775%(2026年7月時点)
  • 楽天・オールカントリー株式インデックス・ファンド ── 信託報酬 年0.0561%(同)

どちらも信託報酬(運用コスト)が年0.06%以下と極めて低い。100万円を1年運用しても600円未満のコストだ。

要するに、「ネット証券でNISA口座を開く → つみたて投資枠で月1万円 → オルカンを積み立てる」。この3つだけで、政府が目指す「貯蓄から投資へ」の第一歩は踏み出せる。

注意点──投資にリスクはある。生活防衛資金を確保してから

当然だが、投資には元本割れのリスクがある。全世界株式インデックスでも、リーマンショック時(2008年)には一時的に約50%の下落を経験している。

だからこそ、以下の2点を守ってほしい。

  1. 生活防衛資金を先に確保する: 生活費の3〜6ヶ月分は現預金で手元に残しておく。投資に回すのはそれ以上の余裕資金だけ
  2. 下落時に売らない: 積立投資の強みは、価格が下がったときに多くの口数を買えること(ドルコスト平均法(定額で定期的に買い続ける手法))。短期の値動きに一喜一憂せず、10年以上の長期目線で続ける

自分も過去に、投資を始めた直後に相場が下がってパニック売りした経験がある。結果的にその後の回復局面を全部逃した。「下がっても売らない」と事前に決めておくだけで、結果は大きく変わる。

今後のスケジュール──2026年夏以降に注目すべき動き

政府の新金融戦略に関連して、今後注目すべきスケジュールは以下のとおり。

  • 2026年夏: 新金融戦略の正式決定(家計資産40%目標の確定)
  • 2026年度中: こどもNISA(こども支援NISA)の制度設計・法整備。0〜17歳が対象で、つみたて投資枠の年齢要件撤廃が予定されている(金融庁 令和8年度税制改正
  • 2027年以降: こどもNISA施行開始の見込み
  • 2040年: 家計金融資産の株式・投信・債券比率40%の達成目標年

つまり、制度面では今後さらに投資がしやすくなる方向に進む。今のうちに新NISAで「投資の習慣」を身につけておけば、新しい制度が始まったときにもスムーズに対応できる。

FAQ

家計資産の4割を投資に回せという意味?

個人に「資産の4割を投資しろ」という話ではない。日本全体の家計金融資産の構成比として、株式・投信・債券の合計を2040年までに40%に引き上げるという国レベルの目標だ。個人はあくまで自分の生活状況に合わせた金額で投資すればよい。

新NISAは今からでも始められる?

始められる。新NISAは2024年1月にスタートしており、2026年7月時点でも口座開設は随時受付中だ。年間投資枠(つみたて120万円+成長240万円)は毎年リセットされるので、途中から始めても不利にはならない。

月いくらから投資できる?

ネット証券なら月100円から積立投資が可能だ。ただし現実的に資産形成を実感するには月1万円〜3万円程度が目安。無理のない金額から始めて、収入が増えたら積立額を上げるのが堅実だ。

投資で損をしたら確定申告は必要?

NISA口座内の取引は、利益が出ても損失が出ても確定申告は不要だ。ただし、NISA口座の損失は他の口座の利益と損益通算(赤字を他の所得から差し引く制度)ができない点には注意が必要。

オルカン以外に初心者向けの商品はある?

米国株に集中投資したい場合は「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」も人気がある。ただし、1カ国集中はリスクが高くなるため、分散の観点からは全世界株式(オルカン)のほうが初心者向きだ。

参考文献