結論から言うと、会社員が証券口座を開くなら、迷ったら「特定口座(源泉徴収あり)」を選ぶのが手間の少ない選択です。売却益にかかる税金を証券会社が計算し、納税まで済ませてくれるため、原則として確定申告が不要になります(2026年11月時点の制度に基づく説明です)。
この記事では、「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」の違いを、手間・税務・損失が出たときの扱いで比較します。あわせて、会社員でも確定申告が必要になるケースと、年末までに確認しておきたい点を整理します。
特定口座と一般口座の違い|まず口座の種類を整理
株式や投資信託を売って利益が出ると、その利益には20.315%の税金がかかります。内訳は所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%です(国税庁「No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」より)。
この税額を「誰が計算するか」で、口座の種類が分かれます。
- 特定口座(源泉徴収あり):証券会社が損益を計算し、税金を差し引いて納めてくれる
- 特定口座(源泉徴収なし):証券会社が損益を計算した「年間取引報告書」を作ってくれるが、納税は自分で行う
- 一般口座:損益の計算も申告も、すべて自分で行う
特定口座制度の概要は、国税庁のNo.1476 特定口座制度で確認できます。なお、新NISA(金融庁 NISA特設ウェブサイト)の非課税枠で買った分は、そもそも売却益に課税されないため、ここで説明する税金の対象外です。
源泉徴収あり・なしを比較|手間と税務の違い
特定口座の2種類を、会社員の目線で並べると次のとおりです。
| 項目 | 源泉徴収あり | 源泉徴収なし |
|---|---|---|
| 損益の計算 | 証券会社 | 証券会社(年間取引報告書を作成) |
| 税金の納付 | 売却時に自動で天引き | 自分で確定申告して納付 |
| 確定申告 | 原則不要(任意で申告も可) | 利益が出れば原則必要※ |
| 手間 | 少ない | やや多い |
※給与所得者(会社員)は、給与以外の所得が年間20万円以下なら所得税の確定申告は不要です(国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」より)。ただし住民税は別の扱いで、お住まいの自治体への申告が必要になる場合があります。詳細は自治体の窓口で確認してください。
要するに、「源泉徴収あり」は税金を先に払い終える代わりに、手元に残る資金がその分だけ減ります。たとえば売却益が30万円なら、税額は約6万945円(30万円×20.315%)です。「源泉徴収なし」は納税のタイミングが翌年の申告時になりますが、申告の手間が発生します。
編集部としては、会社員で投資の売却頻度が高くない人なら、「源泉徴収あり」を基本にしたほうが失敗しにくいと考えています。申告書の作成ミスや提出忘れのリスクを避けられるためです。
確定申告が必要・不要になるケース|会社員の場合
「源泉徴収あり」で申告が不要なケース
1つの特定口座(源泉徴収あり)の中で売却益と税金が完結していれば、基本的に確定申告は不要です。副業収入がなく、年末調整で済んでいる会社員なら、これで手続きは終わります。
「源泉徴収あり」でも申告したほうがよいケース
次のような場合は、あえて申告することで税金が戻る可能性があります。
- 損益通算(利益と損失を相殺する制度)をしたいとき:複数の口座で、片方が利益・片方が損失になった場合。申告しなければ、利益側の税金が引かれたままになります
- 譲渡損失の繰越控除:損失が出た年に申告すると、最長3年間、翌年以降の利益と相殺できます(国税庁「No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」より)
- 配当や分配金で源泉徴収された税金について、他の所得との兼ね合いで還付を受けたいとき
「源泉徴収なし」で申告が必要なケース
特定口座(源泉徴収なし)や一般口座で売却益が出た場合、会社員でも次の条件では確定申告が必要です。
- 給与以外の所得(株の売却益、副業収入など)の合計が年間20万円を超える
- 給与の収入が2,000万円を超える、または2か所以上から給与を受けている、など
20万円以下であれば所得税の申告は不要ですが、住民税の申告は別に必要とされる点に注意してください。「申告不要」と「住民税がかからない」は同じ意味ではありません。
また、申告の有無によって、国民健康保険料や家族の扶養判定に影響が出る場合があります。心配な方は、加入先の健康保険組合や自治体に確認すると安心です。
口座の選択を変えたいとき|年末までに確認すべき点
2026年11月時点で、今年の残りは約2か月です。年末までに次の点を確認しておきましょう。
- 今の口座区分を確認する:証券会社のマイページで、「特定口座(源泉徴収あり/なし)」のどちらかを確認します
- 区分変更のタイミングを確認する:区分の変更は、その年の最初の売却や配当の受け取りの前までに届け出る必要があります。年の途中で切り替えられない証券会社が多く、変更届の締め切りは12月の中旬から下旬に設定されていることがあります。各社の案内で日付を確認してください
- 複数口座の損益を見直す:複数の証券会社で売買している場合、口座をまたいだ損益通算には確定申告が必要です。含み損の銘柄の売却を検討するなら、年内に判断が必要になります
- 年間取引報告書の受け取りを準備する:翌年1月以降に電子交付されるのが一般的です。申告する場合は、この報告書が計算の基になります
売却の判断は、税金だけでなく投資方針も踏まえて決めてください。税金のために売却を急ぐと、本来の運用計画から外れてしまうこともあります。
FAQ
特定口座の源泉徴収あり・なし、どちらを選ぶべきですか?
確定申告の手間を減らしたい会社員は、源泉徴収ありが基本です。損益通算や繰越控除を毎年きちんと申告できる人は、なしを選ぶ意味もあります。
源泉徴収ありでも確定申告したほうがいい場合は?
複数口座で損益通算したいときや、損失を翌年以降に繰り越したいときです。申告しなければ、これらの制度は適用されません。
会社員で株の利益が20万円以下なら申告は不要ですか?
所得税の確定申告は不要です。ただし住民税は別に申告が必要な場合があるため、お住まいの自治体の案内を確認してください。
源泉徴収あり・なしは途中で変更できますか?
変更届を出せば可能です。ただし、その年の最初の売却や配当の前までという条件があり、年の途中では切り替えられません。締め切りは各社の案内を確認してください。
新NISAの口座も確定申告は必要ですか?
NISA口座内の売却益や配当は非課税のため、申告は不要です。ただし、NISA口座の損失は、他の口座の利益との損益通算はできません。
参考文献
- No.1476 特定口座制度 — 国税庁
- No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税) — 国税庁
- No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除 — 国税庁
- No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人 — 国税庁
- NISA特設ウェブサイト — 金融庁