2026年6月、日銀の追加利上げがいよいよ現実味を帯びてきた。政策金利は2025年12月に0.75%へ引き上げられ、2026年4月会合では据え置きながらも反対票が3票に急増。市場は6月会合での利上げをほぼ織り込んでいる。
変動金利で住宅ローンを組んでいる人にとって、「固定に借り換えるべきか」「繰上返済すべきか」「このまま据え置くべきか」は今まさに判断を迫られるテーマだ。
筆者(小林)自身、物販で月商400万を回していた時代に「金利なんて誤差」と高をくくっていたことがある。しかし在庫地獄で撤退し、三児の教育費を見据えて固定費を徹底的に見直した経験から言えるのは、住宅ローンの金利差は月々わずかでも総額では数百万円の差になるということだ。
この記事では、変動金利ローンを組んでいる人が今すぐ使える借り換え判断の5基準を、金利差シミュレーション付きで整理した。
2026年6月時点の金利環境を整理する
まず、判断の前提となる金利環境を確認しておこう。
政策金利(短期金利): 日銀は2025年12月に政策金利を0.5%→0.75%へ引き上げた(日本銀行 金融政策決定会合)。1995年以来約30年ぶりの高水準だ。2026年4月会合では据え置いたものの、反対票が1票→3票に急増しており、政策ボード内のコンセンサスは「次は利上げ」へ傾いている。
変動金利(2026年6月): 主要都市銀行の変動金利(中央値)は0.990%前後。三菱UFJ銀行が年0.945%、住信SBIネット銀行が年0.950%、PayPay銀行が年0.980%で横並びの状態だ(ダイヤモンド不動産研究所 2026年6月)。
固定金利(2026年6月): フラット35(21〜35年)の最頻金利は3.210%。5月から0.5%の大幅上昇で、過去最大級の引き上げ幅となった(モゲチェック 2026年6月)。背景には10年国債利回りの上昇がある(2026年5月29日時点で2.657%)。
今後の見通し: 野村證券は2026年6月・12月・2027年6月に各0.25%ずつ利上げを予想している(野村證券レポート)。仮に実現すれば政策金利は2027年半ばに1.50%に達し、変動金利は1.5〜1.8%程度まで上昇する可能性がある。
借り換え判断の5基準
結論から言うと、以下の5つの基準を順番にチェックすれば、借り換え・繰上返済・据え置きの判断ができる。
基準1: 残債と残期間の「金利感応度」を計算する
金利上昇のインパクトは「残債 × 残期間」で決まる。残債3,000万円・残り25年の人と、残債1,000万円・残り10年の人では、同じ金利上昇でも影響額がまったく違う。
目安: 残債2,000万円以上かつ残期間15年以上なら、金利差0.5%でも総返済額に100万円以上の差が出る。この条件に当てはまる人は、以下の基準2〜5を真剣に検討すべきだ。
逆に、残債1,000万円以下または残期間10年以下なら、借り換えの手数料(後述)を回収しきれない可能性が高い。据え置きが合理的なケースが多い。
基準2: 借り換え手数料の「損益分岐点」を確認する
借り換えには以下のコストがかかる。
- 事務手数料: 借入額の2.2%(税込)が主流。3,000万円なら66万円
- 登記費用(抵当権抹消+設定): 15〜30万円
- 印紙税: 2〜6万円
- 保証料: 金融機関による(ネット銀行は無料のケースも)
合計で80〜100万円程度が目安だ。つまり、借り換えで得られる金利メリットがこの金額を上回らなければ、借り換えは損になる。
損益分岐の計算式(簡易版): 年間返済差額 × 残年数 > 借り換えコスト なら借り換えが有利。具体的なシミュレーションは基準4で示す。
基準3: 金利上昇の「家計耐性」を確認する
数字上の損得とは別に、「金利が上がっても返済を続けられるか」という家計の耐性チェックが必要だ。
チェックポイント:
- 現在の返済比率(年間返済額 ÷ 年収)が25%以下か
- 金利が1.5%に上昇した場合でも返済比率が30%以内に収まるか
- 生活防衛資金(生活費6ヶ月分)が確保できているか
- 今後5年以内に教育費・車購入など大きな支出予定があるか
うちも三人の子どもを育てているから実感するが、教育費のピークと金利上昇が重なると家計は一気に苦しくなる。返済比率が25%を超えそうなら、金利の損得計算より先に「固定で支出を確定させる安心」を優先するのも合理的な選択だ。
基準4: 3パターンの金利シミュレーションで比較する
ここでは残債3,000万円・残り25年・現在の変動金利0.95%を前提に、3つのシナリオを試算する。
シナリオA: 変動金利を据え置き(段階的に上昇)
- 2026年後半: 1.20%(+0.25%利上げ反映)
- 2027年以降: 1.50%で安定と仮定
- 25年間の総返済額: 約3,580万円
シナリオB: 今すぐ固定金利3.21%に借り換え
- 借り換えコスト: 約90万円
- 25年間の総返済額: 約4,370万円(コスト込み)
シナリオC: 変動のまま繰上返済200万円を実行
- 残債を2,800万円に圧縮した上で変動継続
- 金利上昇はシナリオAと同条件
- 25年間の総返済額: 約3,350万円
結果: 変動金利が1.50%で頭打ちになるなら、シナリオC(繰上返済)が最も有利で、シナリオA(据え置き)でも固定借り換えより約790万円少ない。ただし変動金利が2.5%以上に到達する局面では、固定借り換えが逆転する。
つまり、「変動金利が将来どこまで上がるか」が分岐点だ。野村證券の予想(2027年半ばに政策金利1.50%)を前提にすれば、変動金利は1.5〜1.8%程度。この水準なら据え置きまたは繰上返済が有利という計算になる。
基準5: 「5年ルール」と「125%ルール」の適用を確認する
変動金利には多くの銀行で以下の激変緩和措置がある。
- 5年ルール: 金利が変わっても、毎月の返済額は5年間変わらない
- 125%ルール: 返済額見直し時の増加幅は前回の125%まで
ただし、これは「返済額」が抑えられるだけで、「利息の総額」は増える。返済額が据え置かれている間、元金の減りが遅くなり、最終的に「未払い利息」が発生するリスクがある。
注意点: ネット銀行の一部(SBI新生銀行、PayPay銀行など)は5年ルール・125%ルールを採用していない。この場合、金利上昇が即座に返済額に反映されるため、家計への影響が大きくなる。自分のローン契約でこれらのルールが適用されるか、必ず契約書で確認してほしい。
据え置き・繰上返済・借り換え それぞれ向いている人
5基準を踏まえ、3つの選択肢それぞれに向いている人を整理する。
変動金利を据え置くべき人:
- 残債1,500万円以下、または残期間10年以下
- 返済比率が20%以下で家計に余裕がある
- 金利上昇時に繰上返済できる貯蓄がある
繰上返済を優先すべき人:
- 手元に200万円以上の余裕資金がある(生活防衛資金は別に確保済み)
- 残債が多く、残期間も長い
- NISAや投資に回すより確定リターン(金利分の節約)を重視したい
固定金利に借り換えるべき人:
- 残債3,000万円以上かつ残期間20年以上
- 今後の収入が不安定(転職予定、フリーランス化など)
- 教育費など大きな支出と返済ピークが重なる
- 「月々の返済額が変わらない安心」を最優先したい
借り換え実行時の具体的な手順
固定金利への借り換えを決めた場合の手順を整理する。
Step 1: 複数行に事前審査を申し込む
借り換えの事前審査は複数行に同時申込が可能で、信用情報に悪影響はない。最低3行、できれば5行に申し込んで金利・手数料を比較するのが鉄則だ。モゲチェックなどの一括比較サービスを使うと効率的。
Step 2: 総返済額で比較する
表面金利だけでなく、事務手数料・保証料を含めた「総返済額」で比較する。金利が0.1%低くても手数料が高ければ逆転する。
Step 3: 現在の銀行に「金利交渉」する
他行の審査結果を材料に、現在借りている銀行に金利引き下げ交渉をするのも有効だ。借り換えの手数料がゼロになるため、わずかな金利引き下げでも効果は大きい。実際に交渉で0.1〜0.3%引き下げに成功した事例は少なくない。
Step 4: 団信(団体信用生命保険)の内容を確認する
借り換え先の団信が現在と同等以上かを確認する。がん特約や三大疾病保障が外れるケースもあるため、保障内容の比較は必須だ。
やってはいけないNG行動3つ
最後に、金利上昇局面でありがちな失敗パターンを3つ挙げる。
NG1: 「まだ上がるかも」で焦って判断する
「来月にはもっと上がるから今すぐ借り換えないと」というパニック心理は禁物。固定金利はすでに将来の利上げをある程度織り込んで上昇している。冷静にシミュレーションした上で判断しよう。
NG2: 投資用資金を繰上返済に回す
NISAの積立を止めて繰上返済に回すのは、よほど金利が高くない限り非効率。住宅ローン金利1.5%に対し、全世界株式の期待リターンは年4〜7%。生活防衛資金とは別の余裕資金で繰上返済するのが原則だ。
NG3: 住宅ローン控除の残期間を無視する
住宅ローン控除(最大13年間、残高の0.7%を所得税から控除)の適用期間中は、繰上返済で残高を減らすと控除額も減る。控除期間が残り5年以上ある場合は、繰上返済のタイミングを控除終了後にずらす方が得になるケースがある。
FAQ
変動金利はどこまで上がる可能性がありますか?
2026年6月時点で主要銀行の変動金利は約0.95〜0.99%です。野村證券は2027年半ばに政策金利1.50%を予想しており、実現すれば変動金利は1.5〜1.8%程度まで上昇する可能性があります。ただしリーマンショック前でも変動金利は2.875%が上限でした。
借り換え手数料はどれくらいかかりますか?
事務手数料(借入額の2.2%)、登記費用(15〜30万円)、印紙税(2〜6万円)を合わせて80〜100万円程度が目安です。ネット銀行は保証料無料のケースが多いですが、事務手数料は同水準です。
固定と変動、今から組むならどちらが良いですか?
新規借入の場合、2026年6月時点で変動金利(約0.95%)と固定金利(フラット35で3.21%)の差は約2.26%と過去最大級に開いています。残債が大きく返済期間が長いほど、この差の影響は大きくなります。家計の安定を優先するなら固定、総返済額の最小化を狙うなら変動が基本方針です。
繰上返済は「期間短縮型」と「返済額軽減型」どちらが得ですか?
利息の総削減額は期間短縮型の方が大きくなります。ただし、金利上昇局面では返済額軽減型で月々の負担を抑える方が家計の安全度は高まります。目的に応じて使い分けましょう。
金利交渉は本当にできますか?
可能です。他行の審査承認書を持参して相談するのが効果的です。特にメガバンクや地方銀行は顧客流出を防ぐために0.1〜0.3%程度の引き下げに応じるケースがあります。交渉するだけなら費用はかかりません。
参考文献
- 金融政策決定会合の運営 — 日本銀行
- 日銀の追加利上げ予想 2026年2回・2027年1回を新たなメインシナリオに — 野村證券
- 住宅ローン金利2026年6月の最新動向 — モゲチェック
- 住宅ローン変動金利ランキング132行比較【2026年6月】 — ダイヤモンド不動産研究所
- 最新の金利情報 — 住宅金融支援機構(フラット35)
- 【2026年最新】日銀の今後の利上げの動向は? — 三菱UFJ銀行 Money Canvas