AI画像生成ツールで副業を始めようとして「これ、売っていいの?」と手が止まった経験はないだろうか。筆者の場合、MidjourneyやStable DiffusionをAI受託案件に組み込む機会が増えた2025年以降、依頼主から「著作権は問題ありませんか?」と確認されるケースが急増した。
2026年8月現在、日本の著作権法上のAI生成画像の扱いは「全部グレー」の時代から「判断基準の輪郭が見えてきた」段階に入りつつある。文化庁が2024年3月に公表した「AIと著作権に関する考え方について」をベースに、本記事では法解釈・主要プラットフォームの規約・安全に販売できる3条件と避けるべきNGパターンを初心者向けに整理する。
日本著作権法はAI生成画像をどう扱っているか(2026年8月現在)
日本の著作権法(第2条第1項第1号)は著作物を「思想または感情を創作的に表現したもの」と定義している。この「創作的」という要件が、AI生成画像の著作権判断の核心になる。
文化庁が2024年3月に公表した考え方では、プロンプトを入力するだけで生成したAI画像は、人間の創作的寄与が乏しいため著作権が発生しない可能性が高いとされている。一方で、以下のような場合は著作権が認められる余地があるとされている。
- 多数回の試行錯誤を経て特定の出力を選択・組み合わせた場合
- 生成後に大幅な手動加工・描き込みを行った場合
- LoRAの学習データ選定やモデル調整に創作的判断が伴う場合
つまり「プロンプト1行で生成して販売」は著作権的保護を受けにくい一方、「AI生成を下地に大幅に手を加えた作品」は著作権が認められる可能性がある、という二段階の理解が2026年時点の基本軸だ。
なお、2026年8月現在もAI生成画像に関する日本国内の裁判例は限られており、文化庁でも継続検討中の論点が残っている。法改正の動向は文化庁著作権課の公式ページで随時確認することを強く推奨する。
PIXTA・Shutterstock・BOOTHの規約比較(2026年8月時点)
著作権法とは別に、各プラットフォームが独自の規約でAI生成コンテンツの扱いを定めている。2026年8月時点の主要3プラットフォームの状況を整理する。
PIXTA
PIXTAは2023年10月にコントリビューター向けガイドラインを改定し、AI生成コンテンツには「AI生成」の明示タグが必須となった。審査は厳格で、既存の著名人の顔に酷似したもの・商標を含むもの・既存作品の模倣は不掲載となる。ストック素材として販売できる画像の単価は手撮り写真と同等だが、審査通過率は低い傾向にある。詳細はPIXTA公式コントリビューターページを参照のこと。
Shutterstock
Shutterstockは2023年からAI生成画像の投稿を受け入れており、Contributor Program経由での収益化が可能だ。使用したAIツールの申告が求められ、「著作権保護された素材を学習した特定モデルの出力」は禁止されている。Midjourneyについては条件付きで投稿が可能(2026年8月時点)。なお、Shutterstockは独自のAI生成プラットフォームも展開しており、競合の面では留意が必要だ。
BOOTH(pixiv)
BOOTHはpixivのAIに関するガイドラインに準拠しており、AI生成画像の販売は可能だが「AIを使用した作品」であることの表示が必要だ。既存アニメ・ゲームキャラクターの模倣は権利者からの申告で削除対象となる。詳細はpixivポリシーページで確認すること。
| プラットフォーム | AI生成画像の販売 | 必要な表示 | 主な禁止事項 |
|---|---|---|---|
| PIXTA | 可(審査あり) | AI生成タグ必須 | 著名人の顔・商標・既存作品模倣 |
| Shutterstock | 可(申告あり) | 使用AIツールの申告 | 著作権素材学習モデルの出力 |
| BOOTH | 可(表示あり) | AI使用表示必須 | 無断二次創作・商標侵害 |
AI生成画像を合法的に販売できる3条件
法律とプラットフォーム規約を整理したうえで、安全に販売するための3条件を解説する。
条件1: AI生成であることをプラットフォームのルールに従って明示する
2026年現在、「AI生成を隠して販売」は最大のリスク要因だ。規約違反によるアカウント停止だけでなく、消費者に対しては景品表示法(優良誤認)の問題に発展し得る。面倒に感じても、各プラットフォームの定める方法でAI生成の旨を表示することが出発点になる。
条件2: 既存の著作物に「依拠」していないことを確認する
著作権侵害の成立要件は「依拠性(既存著作物を参照・模倣したこと)」と「類似性」の両方が必要とされる。特定のアニメキャラクター名をプロンプトに入れる・他者の写真をimg2imgの入力に使うといった行為は依拠性を疑われやすい。汎用的な概念で生成した画像(「青空の下のコーヒーカップ」など)のほうがリスクは大幅に低い。
条件3: 商標・肖像権・パブリシティ権の侵害がないことを確認する
著作権とは別に、商標権・肖像権・パブリシティ権の侵害も販売停止・損害賠償の原因になる。ブランドロゴに酷似したデザイン・実在する著名人の顔が映り込んだ生成画像・有名ブランドのロゴを含む背景などは要注意だ。AIが「意図せず」生成した場合でも、販売行為に対して責任を問われる可能性がある。
絶対にやってはいけないNGパターン4選
3条件の裏返しとして、著作権・規約違反のリスクが特に高い具体的なNGパターンを4つ挙げる。
NG1: 既存キャラクター・IPの模倣を商用販売する
「〇〇風キャラクター」として人気アニメ・ゲームのIPに酷似した画像をBOOTHやPIXTAで有償販売するのは、著作権侵害・商標権侵害の双方のリスクがある。同人活動のグレーゾーン文化とは別に、商用販売は権利者が積極的に対応するケースが増えており、2025年以降の実例でも削除要請・アカウント停止が報告されている。
NG2: 他者の写真・イラストをimg2imgで加工して販売する
他者の著作物をStable DiffusionのControlNetやimg2imgで変形し「AIアート」として販売するのは著作権侵害に直結しやすい。原著作物への依拠性が明確になるため、外見が変わっていても法的リスクは高い。フリー素材(CC0ライセンス等)を入力に使う場合でも、そのライセンスの商用利用範囲を逐一確認すること。
NG3: AI生成を「手描き・オリジナルイラスト」と偽って販売する
「人間が描いたオリジナルイラスト」と称してAI生成画像を販売するのは、規約違反であるとともに買い手への不実表示になり得る。近年はAI検出ツールの精度が向上しており、発覚リスクも高まっている。正直に「AI生成画像」と表示したほうが長期的な信頼構築につながる。
NG4: 著作権保護中の作品を無断でLoRAに学習させて商用展開する
特定のイラストレーターの作品を無断でLoRAに学習させ、その出力を販売・配布する行為は、2026年時点の議論でも著作権侵害の可能性が高いとする見解が多い。自作LoRAを公開・販売する場合は、学習に使った素材のライセンスを必ず確認する必要がある。
FAQ
Midjourneyで生成した画像の著作権は誰のもの?
Midjourneyの利用規約(2024年時点)では、有料プランユーザーは商業利用が可能とされている。ただし日本法上、プロンプトのみで生成した画像に著作権が発生するかは別問題だ。「Midjourneyが商業利用を許可している=日本法上の著作権が自分にある」ではない点に注意。利用規約は随時改定されるためMidjourney公式ドキュメントで最新情報を確認すること。
Stable Diffusionで生成した画像は商用利用できる?
Stable Diffusionのモデルライセンスはバージョンによって異なる。SDXL・SD3等はCreativeML Open RAIL+M ライセンスで商用利用は原則可能だが、一部の用途(有害コンテンツ等)は禁止されている。Civitai等のカスタムモデルを利用する場合は、それぞれのライセンスを個別に確認すること。
AIイラストをBOOTHで販売したら訴えられる?
BOOTH自体が訴えの主体になるわけではなく、販売するコンテンツが著作権・商標権を侵害している場合に権利者から申告・訴訟のリスクがある。AI生成を明示し、既存IPや他者の著作物に依拠しないオリジナルコンテンツであれば、リスクは大幅に下がる。
CivitaiからダウンロードしたカスタムLoRAの商用利用は?
LoRAモデルにはそれぞれライセンスが設定されており、商用利用可・不可・要クレジット表示など条件が異なる。ダウンロードページで必ず確認すること。確認なしに商用販売すると、モデル作者との規約違反になる可能性がある。
pixivでAI生成タグを付けないとどうなる?
pixivのガイドラインに違反した場合、コンテンツの削除・アカウント停止の対象になる。2023年以降、pixivはAI生成作品の表示義務を強化しており、未表示のAI作品が他ユーザーの通報で対応される事例が増えている。正直な表示がアカウント維持の基本だ。
参考文献
- 文化庁「著作権」トップページ — 文化庁, 随時更新
- 「AIと著作権に関する考え方について」 — 文化庁, 2024年3月
- PIXTAコントリビュータープログラム — PIXTA株式会社, 随時更新
- Shutterstock Contributor Program — Shutterstock, 随時更新
- pixivポリシー(AI生成コンテンツに関する取り組み含む) — pixiv株式会社, 随時更新
- Midjourney Terms of Service — Midjourney, 随時更新