YouTube収益が出始めたとき、真っ先につまずくのが税務の話だ。「20万円を超えたら申告が必要」という話は耳にするが、実際にどう動けばいいか体系的に教えてくれる情報はなかなかない。
本記事では、会社員がYouTubeで副収入を得た場合の確定申告の義務・住民税バレを防ぐ普通徴収の手続き・経費にできる機材の範囲・節税5項目を2026年4月現在の税制をもとに整理した。
会社員YouTuberが知っておくべき「20万円ライン」の意味
所得税法では、給与所得者が確定申告を義務付けられる基準として「給与所得・退職所得以外の所得が年間20万円を超える場合」が定められている(国税庁・確定申告が必要な方)。
YouTube収益(Google AdSense経由)は「雑所得」に該当するため、年間の雑所得合計が20万円を超えた時点で確定申告が必要になる。なお、判定基準は「収入」ではなく「所得(収入−必要経費)」だ。機材代や編集ソフト代などを差し引いた後の金額が20万円を下回れば、所得税の申告義務はない。
ただし見落とせない注意点がある。所得が20万円以下でも住民税の申告は必要だ。住民税は各市区町村への申告義務があり、所得税の20万円免除ルールは適用されない。収益が少額であっても住民税申告は怠らないようにしよう。
住民税バレを防ぐ「普通徴収」への切り替え方法
会社員が副業収入を申告すると、副業分の住民税が上乗せされた通知が勤務先に届くことがある。これは「特別徴収」のままにしていると起こる。副業の存在を会社に知られたくない場合は、副業分の住民税を「普通徴収(自分で納付)」に切り替えることが重要だ。
切り替えの手順は以下の通りだ(2026年の確定申告書に基づく)。
- 確定申告書等作成コーナー(国税庁e-Tax)でオンライン作成を開始する
- 第2表「住民税・事業税に関する事項」欄を開く
- 「給与所得以外の住民税の徴収方法の選択」で「自分で納付」を選択する
- 申告後、翌6〜7月ごろに市区町村から納付書が自宅に届く
この設定をすることで、勤務先へは給与分の住民税のみが通知される。副業分は自宅へ直接届く納付書で自分で支払う形になる。
なお副業収入の規模が大きい場合(目安として年間50万円超)は、住民税の増額幅が目立ち、給与担当者に気づかれるケースもゼロではない。会社の副業規定を確認した上で行動することを推奨する。
YouTube副業で経費にできる機材・サービス一覧
雑所得の計算では「必要経費」を差し引くことができる。ただし業務に直接関係する支出が前提で、プライベートとの兼用がある場合は按分(あんぶん)が必要だ。以下に主要な経費項目をまとめた。
| 経費項目 | 備考・按分の考え方 |
|---|---|
| カメラ・レンズ(10万円未満) | 動画制作に使用する場合は全額経費。10万円以上は減価償却 |
| マイク・照明機材 | YouTube制作専用なら全額経費計上可 |
| PC・タブレット | 業務・プライベート兼用の場合は使用割合で按分(例:60%業務→60%経費) |
| 動画編集ソフト(月額サブスク) | Adobe Premiere ProやDaVinci Resolve Studioの費用は全額経費 |
| BGM・SE使用料 | AudiostockやEpidemicSoundの利用料は全額経費 |
| 通信費(インターネット回線) | 自宅兼用の場合は業務利用割合で按分 |
| サムネイル制作外注費 | ランサーズ・ミーデア等への支払いは全額経費 |
| 書籍・オンライン講座 | チャンネルテーマに直結する学習費用は経費計上の余地あり |
| 取材・ロケ費用(交通費含む) | 動画制作目的であれば経費。観光目的との混在は按分 |
| クラウドストレージ | YouTube制作データ保管用のDropbox・Google One等は経費 |
筆者(森本)がXでの収益化を先行させ、後からYouTubeに展開した時期のことだ。最初の1年間は経費の仕分けを後回しにしてしまい、確定申告のタイミングで振込履歴を全部掘り返すことになった。月次でfreeeやマネーフォワードに入力する習慣が、結果として一番時間を節約できると実感している。
会社員YouTuberが使える節税5項目
確定申告を行う会社員は、以下5つの節税手段を組み合わせることで手取りを増やせる。
① 必要経費の取りこぼしをなくす
最も即効性が高い節税は経費の取りこぼしをゼロにすることだ。機材・ソフト代・外注費を漏れなく計上するだけで課税所得を数万円〜十数万円下げられるケースは珍しくない。まずここから手をつけよう。
② 青色申告(事業所得への切り替え)
YouTube収益が年間300万円超を継続的に稼げるレベルに達した場合、「事業所得」として届け出ることで青色申告特別控除(最大65万円)が使える。ただし収益規模・継続性・副業比率によって「雑所得 vs 事業所得」の判断が変わるため、税理士への相談を推奨する(国税庁・事業所得と業務に係る雑所得の判定)。
③ ふるさと納税の上限額を再計算する
副業収入が増えると課税所得が上がり、ふるさと納税の控除上限額も増える。AdSense収益が安定してきたタイミングで総務省のシミュレーターで上限額を再計算するとよい。
④ iDeCoで掛け金を所得控除に
iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛け金は全額所得控除になる。会社員は月2.3万円まで拠出でき、年間27.6万円の控除効果がある。副業収益で増えた課税所得を圧縮する手段として有効だ(iDeCo公式サイト)。
⑤ 生命保険料控除・地震保険料控除の申告漏れを確認
確定申告時に年末調整で申告し忘れた控除を追加できる。生命保険料控除証明書・地震保険料控除証明書を手元に揃えておき、合わせて申告しよう。
確定申告の具体的な手順(会社員・初年度編)
初めて確定申告をする会社員が最短でゴールできる手順は以下の通りだ。
- Google AdSenseの収益レポートを確認する:AdSenseのダッシュボード「お支払い」→「お支払い履歴」で前年1月〜12月の受取合計を確認する
- 経費を集計する:クレカ明細・振込履歴・レシートを月ごとに整理。freeeまたはマネーフォワードクラウド確定申告を使うと入力が楽だ
- e-Taxで確定申告書を作成する:国税庁e-Taxの確定申告書等作成コーナーで「給与所得あり」「雑所得あり」の設定で入力を進める
- 第2表で住民税を「自分で納付」に設定する:バレ対策として忘れずに設定しよう
- マイナンバーカードで電子申告する:2月16日〜3月15日の申告期間内に送信。還付申告なら1月1日から受付される
会社員の場合、源泉徴収票(12月末〜翌1月に勤務先から受け取る)を手元に用意すると入力が格段に楽になる。12月の給与明細と合わせて保管しておこう。
FAQ
YouTubeの収益が20万円以下なら何もしなくていい?
所得税の確定申告は不要だが、住民税の申告は市区町村に別途行う必要がある。医療費控除やふるさと納税など他に申告事項がある場合は、その申告書に雑所得として合わせて記載すれば住民税申告も兼ねられる。何も申告しないのが最もリスクが高い。
AdSenseの収益は税込・税抜どちらで計上する?
年間売上が1,000万円未満の場合は消費税の納税義務が免除される(免税事業者)。この場合はAdSenseから受け取った金額をそのまま収入として計上すればよい。1,000万円を超えると課税事業者として消費税申告も必要になる。
会社が副業禁止でも確定申告は必要?
税務申告は法的義務であり、会社の就業規則とは別の話だ。副業禁止でも申告は行わなければならない。普通徴収への切り替えで住民税の通知が勤務先に届くリスクは減らせるが、就業規則の内容は事前に確認しておこう。
機材を購入したが動画を1本も出していない場合でも経費になる?
YouTube Partnerプログラム(収益化)に参加して収益が実際に発生してから購入した機材が基本的な対象だ。収益化前の準備段階の支出は経費計上が難しいケースもあるため、税理士に確認することを推奨する。
確定申告後に追加の税金が来るのはいつ?
所得税の追加分は申告期限(原則3月15日)までに支払う。住民税は翌年6月ごろに納付書が届き、6月・8月・10月・翌年1月の4回に分割して納付する(普通徴収の場合)。収益が伸びてきたら翌年の住民税増加分を見越した現金を手元に置いておくと安心だ。
参考文献
- 確定申告が必要な方 — 国税庁
- 事業所得と業務に係る雑所得の判定 — 国税庁, 2022年改正
- 必要経費(雑所得) — 国税庁
- ふるさと納税の控除上限額の計算について — 総務省
- iDeCo公式サイト — 国民年金基金連合会
- e-Tax 国税電子申告・納税システム — 国税庁