副業の記帳作業、毎月レシートと格闘していないだろうか。筆者は Claude Code と freee の API 連携(MCP)を使って、音声入力だけで仕訳を自動登録する仕組みを構築した。結果、確定申告の準備にかけていた年間20時間超が「月10分の音声メモ」に圧縮できた。2025年後半に freee が公開した MCP サーバーを活用し、副業会社員でも導入できる具体的な手順を、実際の時短データとともに解説する。

freee MCP × Claude Code とは何か

freee は 2025年10月に公式 MCP(Model Context Protocol)サーバーを GitHub で公開した(freee-accounting-mcp-server)。MCP は Anthropic が策定した AI ツール連携プロトコルで、Claude Code などの AI エージェントから外部サービスの API を自然言語で操作できるようにする規格だ。

つまり、Claude Code のターミナルで「今日タクシー代1,200円を交通費で記帳して」と打つだけで、freee 上に仕訳が自動登録される。従来のように freee の画面を開いて科目を選び金額を手入力する作業が不要になる。

筆者自身、AI で受託案件を回しながら毎月30〜40件の経費仕訳を手動入力していた。正直、月末の記帳だけで2時間は溶けていた。この仕組みを導入してからは、経費発生時にスマホから音声メモを飛ばすだけで完結するようになった。

導入に必要な環境と初期設定

2026年5月時点での動作確認環境は以下の通りだ。

  • Claude Code(CLI版 or デスクトップ版)— Anthropic の Claude Max プランまたは API キー
  • freee 会計(個人事業主プランで可。2026年5月時点で月額1,298円・税込)
  • freee MCP サーバー(GitHub リポジトリから取得)
  • Node.js 20 以上(MCP サーバーの実行に必要)
  • freee API のアプリケーション登録(OAuth2 認証用)

Step 1: freee 開発者アカウントでアプリ登録

freee Developers Community でアプリを新規作成し、Client ID と Client Secret を取得する。コールバック URL には http://localhost:3000/callback を設定する。

Step 2: freee MCP サーバーのセットアップ

リポジトリをクローンし、環境変数を設定する。

git clone https://github.com/freee/freee-accounting-mcp-server.git
cd freee-accounting-mcp-server
npm install
cp .env.example .env
# .env に FREEE_CLIENT_ID, FREEE_CLIENT_SECRET, FREEE_COMPANY_ID を記入
npm run auth   # ブラウザが開き OAuth 認証を完了
npm run start  # MCP サーバー起動

Step 3: Claude Code に MCP サーバーを接続

Claude Code の設定ファイル(~/.claude/settings.json または プロジェクトの .claude/settings.json)に MCP サーバーを登録する。

{
  mcpServers: {
    freee: {
      command: node,
      args: [/path/to/freee-accounting-mcp-server/dist/index.js],
      env: {
        FREEE_CLIENT_ID: your-client-id,
        FREEE_CLIENT_SECRET: your-client-secret
      }
    }
  }
}

設定後、Claude Code を再起動すれば freee の MCP ツール群が利用可能になる。

音声入力→自動仕訳登録のワークフロー

導入後の日常フローは以下の通りだ。

  1. 経費発生時: スマホの音声入力で Obsidian や Apple メモに「タクシー 1200円 交通費 渋谷→新宿」と記録(所要10秒)
  2. 週1回の記帳タイム(約10分): メモを Claude Code に貼り付け、「以下をまとめて freee に記帳して」と指示
  3. Claude が自動実行: 勘定科目の推定 → freee MCP で取引登録 → 登録結果の確認まで一気通貫

勘定科目の推定精度は、筆者の過去4ヶ月の実績で約95%(月平均35件中ミス1〜2件)。ミスがあった場合は Claude が「旅費交通費と通信費、どちらですか?」と確認を挟むため、誤登録のまま放置されることはほぼない。

ポイントは「経費発生の瞬間に詳細メモを残す」こと。レシートの写真を撮って月末にまとめて入力する従来方式だと、何の支出だったか思い出せずに時間が溶ける。音声メモ方式なら記憶が鮮明なうちに用途まで記録できる。

月10分で確定申告準備が完了する理由

筆者の導入前後の時間比較を示す(副業収入:月20〜40万円、経費件数:月30〜40件の場合)。

作業導入前(手動)導入後(自動化)
仕訳入力月2時間月8分(音声メモ確認+一括指示)
科目確認・修正月30分月2分(Claude の確認応答に回答)
月次チェック月30分不要(登録時に Claude が整合性確認)
年末の確定申告準備丸1日(8時間)1時間(freee の自動集計を確認するだけ)
年間合計約44時間約3時間

年間41時間の削減。時給換算で考えれば、freee の年間利用料(15,576円・税込)と Claude Max の月額料金を差し引いても十分にペイする計算だ。

注意点とトラブルシューティング

実運用で筆者がつまずいたポイントを共有する。

  • OAuth トークンの期限切れ: freee の OAuth トークンは有効期限がある。MCP サーバーがリフレッシュトークンで自動更新するが、長期間サーバーを停止すると再認証が必要。月1回は起動確認を推奨
  • 勘定科目のカスタマイズ: freee で独自の補助科目を設定している場合、Claude に「うちの科目体系」を CLAUDE.md に書いておくと推定精度が上がる
  • 按分計算: 家事按分(自宅兼事務所の家賃・光熱費)は Claude に按分率を事前に伝えておけば自動計算してくれる。筆者は「家賃の30%、電気代の25%を事業経費」とルール化している
  • 領収書の保存義務: 電子帳簿保存法(2024年1月完全義務化)により、電子取引データの保存が必要。自動記帳はあくまで仕訳の効率化であり、証憑の保存は別途対応すること

副業会社員が気をつけるべき確定申告のポイント

この仕組みは記帳を自動化するものであり、確定申告そのものを代行するわけではない。副業会社員として以下を押さえておこう。

  • 20万円ルール: 副業所得が年20万円以下なら所得税の確定申告は不要だが、住民税の申告は必要(国税庁 No.1900
  • 青色申告の活用: 複式簿記で記帳すれば最大65万円の青色申告特別控除が使える。freee × Claude の自動仕訳は複式簿記形式で登録されるため、青色申告の要件を満たしやすい
  • 経費の按分根拠を残す: 税務調査時に按分率の根拠を問われることがある。Claude とのやり取りログを保存しておくと、按分理由の説明資料にもなる

なお、個別の税務判断は税理士に相談することを推奨する。本記事はあくまで記帳の効率化手法を紹介するものであり、税務アドバイスではない。

FAQ

freee MCP は無料で使えますか?

freee MCP サーバー自体はオープンソース(MIT ライセンス)で無料だ。ただし freee 会計のアカウント(個人事業主プラン月額1,298円〜、2026年5月時点・税込)と、Claude の利用料(API 従量課金または Claude Max 月額料金)は別途かかる。

プログラミング未経験でも導入できますか?

Node.js のインストールと git clone ができれば導入可能だ。ただし環境変数の設定や OAuth 認証のフローに慣れていない場合は、初回セットアップに1〜2時間見ておくと安心。Claude Code 自体がターミナル操作をガイドしてくれるので、コマンドを一から暗記する必要はない。

音声入力の代わりにレシート画像から自動記帳できますか?

Claude はマルチモーダル対応のため、レシート画像を貼り付けて「これを記帳して」と指示することも可能だ。ただし手書きレシートや感熱紙の劣化した文字は読み取り精度が下がるため、筆者の実感では音声メモのほうが確実。両方を併用するのが実用的だ。

freee 以外の会計ソフト(マネーフォワード、弥生)でも同じことができますか?

2026年5月時点で公式 MCP サーバーを公開しているのは freee のみ。マネーフォワードや弥生は API を公開しているため、カスタム MCP サーバーを自作すれば技術的には可能だが、公式サポートがない分メンテナンスコストが高い。

確定申告の提出自体も Claude で自動化できますか?

freee 会計には確定申告書類の自動作成機能がある。記帳が正確に完了していれば、freee の画面から e-Tax 連携で電子提出が可能。Claude が直接 e-Tax に提出する機能は 2026年5月時点では存在しない。

参考文献