中国輸入せどりで利益を出してきた人にとって、2025年以降の税制変更は見過ごせない。財務省は個人輸入の「1万円以下免税」と「0.6掛け簡易税率」の廃止を段階的に進めており、TEMU・SHEIN・AliExpress経由の仕入れコストが大幅に上がる見込みだ。

筆者自身、せどり全盛期に月商400万円まで伸ばした経験がある。当時は少額免税の恩恵をフルに使っていたから、この制度変更のインパクトは肌感覚で分かる。今回は現行制度と廃止後で利益率がどう変わるかを商品単価別にシミュレーションし、具体的な3つの対策を解説する。

現行の少額免税制度と「0.6掛け」簡易税率の仕組み

まず現行制度を整理しておこう。個人輸入では「課税価格」の計算に特別ルールがある。

個人使用目的の輸入品は、商品価格に0.6を掛けた金額が課税価格になる(税関・簡易税率の解説)。つまり1万円の商品なら課税価格は6,000円だ。そしてこの課税価格が1万円以下であれば、関税・消費税ともに免除される。

計算すると、商品価格が約16,666円以下(16,666円 × 0.6 ≒ 9,999円)なら実質免税になる。これが中国輸入せどりの利益率を支えてきた大きな柱だった。

現行制度のポイント(2025年5月時点)

  • 0.6掛けルール: 個人輸入の課税価格 = 商品価格 × 0.6
  • 少額免税: 課税価格1万円以下なら関税・消費税が免除
  • 結果: 商品価格 約16,666円以下は関税・消費税ゼロで仕入れ可能

なぜ廃止されるのか?財務省の動きと施行時期

廃止の背景には、越境EC(TEMU・SHEINなど)の急拡大がある。財務省の関税・外国為替等審議会では、少額免税制度が海外EC事業者に不公平な競争優位を与えていると指摘されてきた。

2024年11月の同審議会で「少額貨物の免税制度の見直し」が正式に議題に上がり、2025年3月の関税定率法改正案に盛り込まれた。段階的な施行が見込まれている。

想定スケジュール

  • 2025年3月: 関税定率法等の一部改正法案が閣議決定(財務省・関税制度改正
  • 2025年度中: 法案成立・公布
  • 2026年度以降: 段階的に施行(0.6掛けの廃止 → 少額免税の引き下げ or 撤廃)

米国ではすでに2025年5月に中国からの800ドル以下の少額免税(de minimis)を廃止しており(U.S. CBP・De Minimis)、日本もこの流れに追随する形だ。EU も2028年までに150ユーロ以下の免税枠を撤廃する方向で動いている。

利益率シミュレーション|商品単価別の比較

ここが一番気になるところだろう。商品単価別に「現行制度」と「廃止後」で利益率がどう変わるかを試算した。前提条件は以下の通り。

シミュレーション前提

  • 仕入れ元: 中国(AliExpress / 1688.com 経由)
  • 国際送料: 商品価格の15%で計算
  • 販売先: メルカリ(販売手数料10%)
  • 販売価格: 仕入れ原価の2.5倍で設定
  • 関税率: 簡易税率5%で計算(雑貨類の一般的な税率)
  • 消費税: 10%

【ケース1】仕入れ単価 1,000円の商品

項目現行制度廃止後
仕入れ価格1,000円1,000円
課税価格(0.6掛け)600円1,000円(0.6掛け廃止)
関税(5%)0円(免税)50円
消費税(10%)0円(免税)105円
国際送料(15%)150円150円
仕入れ総コスト1,150円1,305円
販売価格2,500円2,500円
メルカリ手数料(10%)250円250円
利益1,100円945円
利益率44.0%37.8%

利益率は44.0% → 37.8%へ、約6ポイントの低下。低単価商品は元の利益額が小さいため、155円の税負担増でもダメージが大きい。

【ケース2】仕入れ単価 5,000円の商品

項目現行制度廃止後
仕入れ価格5,000円5,000円
課税価格(0.6掛け)3,000円5,000円
関税(5%)0円(免税)250円
消費税(10%)0円(免税)525円
国際送料(15%)750円750円
仕入れ総コスト5,750円6,525円
販売価格12,500円12,500円
メルカリ手数料(10%)1,250円1,250円
利益5,500円4,725円
利益率44.0%37.8%

利益額では775円の減少。月100個売る人なら月77,500円の利益減だ。

【ケース3】仕入れ単価 15,000円の商品(現行でもギリギリ免税ライン)

項目現行制度廃止後
仕入れ価格15,000円15,000円
課税価格(0.6掛け)9,000円15,000円
関税(5%)0円(免税)750円
消費税(10%)0円(免税)1,575円
国際送料(15%)2,250円2,250円
仕入れ総コスト17,250円19,575円
販売価格37,500円37,500円
メルカリ手数料(10%)3,750円3,750円
利益16,500円14,175円
利益率44.0%37.8%

月20個でも利益減は46,500円。年間で55.8万円の差になる。「免税だから成り立っていた」という商材は、根本的に採算を見直す必要がある。

今から取るべき3つの対策

制度変更を嘆いても仕方ない。自分が物販で在庫地獄を経験して撤退したとき痛感したのは、「環境が変わったら、戦い方を変えるしかない」ということだ。具体的な対策を3つ挙げる。

対策1: OEM化・自社ブランド化で利益率を引き上げる

関税・消費税が乗るなら、そのぶん粗利が取れる商品構造にする必要がある。転売(既製品の横流し)から OEM(自社ブランド商品の製造委託)へシフトすれば、販売価格を仕入れの3〜5倍に設定できる。

具体的には以下のステップだ。

  1. 売れ筋商品のレビューから「改善ポイント」を抽出する
  2. 1688.com やアリババで工場を探し、ロゴ・パッケージのカスタムを依頼する
  3. 最小ロット(MOQ)100〜300個程度から始める(初期費用 5〜15万円が目安)
  4. Amazon FBA やメルカリShops で自社ブランドとして販売する

OEM 化すれば関税負担が増えても、販売単価を上げられるので利益率は維持しやすい。ただしMOQ 分の在庫リスクは発生するため、まずは売れ行きを転売で検証してからOEM に進むのが鉄則だ。

対策2: 国内仕入れへの切り替えを検討する

中国輸入のコスト優位が縮小するなら、国内仕入れとの差が縮まる。以下の仕入れ先は関税がかからない。

中国輸入で利益率40%を超えていた商材でも、免税廃止後は38%程度に落ちる。一方、国内卸の利益率は20〜30%が相場だが、配送スピード・返品対応・品質管理のコストが圧倒的に低い。トータルで比較するとき、「関税ゼロだから中国」という判断基準は成り立たなくなる。

対策3: 価格転嫁と販売チャネルの見直し

仕入れコスト増を販売価格に転嫁するのは最もシンプルな対策だ。ただし、メルカリやAmazon では価格競争が激しく、単純な値上げは売上減に直結する。

実行のポイントは以下の通り。

  • 段階的な値上げ: 一気に上げず、100〜300円ずつ様子を見る
  • セット販売: 単品より利益率が取りやすい。「3点セットで○○円」は客単価も上がる
  • 販売チャネルの分散: メルカリ(手数料10%)だけでなく、BASE(手数料3.6%+40円)やSTORES(フリープラン手数料5%)など自社ECも検討する
  • Amazon FBA: 手数料は高いが、回転率が上がれば在庫リスクは下がる

結局、免税廃止は全セラーに等しくかかるコスト増だ。他のセラーが対応を遅らせている間に価格改定とチャネル多角化を済ませれば、むしろ相対的に有利になる。

FAQ

少額免税の廃止はいつから適用される?

2025年3月に関税定率法改正案が閣議決定されており、2026年度以降に段階的に施行される見込みです。具体的な施行日は国会審議後に政令で定められます。最新情報は税関公式サイトで確認してください。

TEMUやSHEINで買った個人使用の商品にも関税がかかるようになる?

はい。制度変更後は個人使用目的の少額輸入でも関税・消費税が課されます。0.6掛けの簡易計算も廃止方向のため、商品価格がそのまま課税価格になる見込みです。

すでに仕入れ済みの在庫には影響がある?

いいえ。すでに通関済みの在庫には遡及適用されません。ただし施行日以降に届く商品から新制度が適用されるため、発注タイミングには注意が必要です。

関税を正確に計算するにはどうすればいい?

税関の実行関税率表で品目ごとの税率を確認できます。品目分類(HSコード)が分からない場合は、税関の事前教示制度を利用すると無料で確認できます。

法人化すれば免税は継続できる?

いいえ。少額免税の廃止は個人・法人を問わず適用されます。ただし法人の場合は仕入れにかかる消費税を仕入税額控除で回収できるため、消費税の実質負担は個人事業主より軽くなる場合があります。

参考文献