「AIで画像を作って売れば不労所得」——そんな話をSNSで見かけた人も多いだろう。結論から言うと、AI画像のストックフォト販売は確かに収益化できるが、月収7000円前後に落ち着くケースが大半だ。2026年5月現在の実数字をもとに、投資額・売上・利益率・審査通過率まで包み隠さず解説する。

筆者(原田)自身、画像生成AIの仕事を実務でやるなかで「AIで月100万」系の煽りに違和感を持ち、実際にMidjourneyで1万枚を生成してPIXTA・Adobe Stockに出品してみた。17ヶ月の記録を数字で見せるので、始める前の判断材料にしてほしい。

AI画像ストックフォト副業の全体像と初期コスト

AI画像のストックフォト販売とは、MidjourneyやStable Diffusionなどの画像生成AIでイラスト・写真風素材を作り、PIXTAAdobe Stockなどのストックフォトサイトに登録して販売する副業だ。購入者は企業のプレゼン資料やWebサイトのアイキャッチに使うことが多い。

初期コストは以下のとおり(2026年5月時点)。

  • Midjourney Basic Plan: 月額0(約1,550円/1ドル155円換算)。月200枚の生成が可能(Midjourney公式 Plans
  • Midjourney Standard Plan: 月額0(約4,650円)。無制限生成。本格的に枚数を出すならこちら
  • PIXTA クリエイター登録: 無料。審査あり(PIXTA 素材の販売方法
  • Adobe Stock コントリビューター登録: 無料(Adobe Stock Contributor

つまり、月1,550円〜4,650円の投資で始められる。在庫リスクはゼロ、必要なのはPCとネット環境だけだ。

17ヶ月の実収支データ——月収7000円のリアル

以下は、2025年1月〜2026年5月の17ヶ月間、Midjourney Standard Plan(月0)でAI画像を生成し、PIXTAとAdobe Stockに出品した実績データだ。

項目数値
総生成枚数約12,000枚
出品枚数(審査通過分)約10,200枚
審査通過率約85%
総ダウンロード数約4,800回
累計売上(税引前)約122,000円
月平均売上約7,180円
累計コスト(Midjourney 17ヶ月分)約79,000円(0×17ヶ月)
累計利益約43,000円
1枚あたり平均単価約25.4円/DL

月平均7,180円の売上に対し、Midjourneyの月額コストが約4,650円。月の手取り利益は約2,500円というのが実態だ。「不労所得で月10万」には程遠い数字だが、出品数が積み上がるほどロングテールで売れ続ける構造ではある。

売上の内訳はPIXTAが約65%、Adobe Stockが約35%だった。PIXTAは国内需要に強く、日本のビジネスシーンに特化した素材が売れやすい。Adobe Stockはグローバルだがその分競合も多い。

売れるジャンルと売れないジャンル——ビジネス素材が圧倒的

10,200枚を出品して分かった「売れるジャンル」と「売れないジャンル」を整理する。

売れるジャンル(DL数上位)

  • ビジネス素材(全体の約45%): 会議・プレゼン・握手・オフィス風景のイラスト。企業のパワポ資料やWebサイトのアイキャッチ用途
  • 季節行事・イベント(約20%): 年賀状素材、桜、花火、クリスマス。時期の1〜2ヶ月前にアップロードするのがコツ
  • テクノロジー・DX(約15%): AI・クラウド・サイバーセキュリティの概念図。IT系メディアの需要が安定
  • 医療・ヘルスケア(約10%): 清潔感のあるイラスト。病院やクリニックのパンフレット用

売れないジャンル

  • 風景・自然写真風: 実写カメラマンの素材が強く、AIのメリットが薄い
  • 抽象アート: 需要が限定的で、検索されにくい
  • 人物のリアル写真風: AI特有の不自然さ(指の本数・瞳の違和感)で審査落ちしやすい

自分の経験では、最初の3ヶ月はアート系の画像を大量に出して月3件しかDLされなかった。ビジネス素材にシフトしてから月200DL超えが安定した。ジャンル選定が収益の8割を決めると実感している。

審査通過率85%——リジェクトされる画像の特徴

PIXTAもAdobe Stockも、AI生成画像の出品自体は認めているが、審査基準は年々厳格化している(2026年5月時点)。

PIXTAは2023年11月にAI生成素材の受付ガイドラインを公開し、「AI生成であること」の申告を義務化した。Adobe Stockも生成AIコンテンツのガイドラインで同様のルールを設けている。

筆者の審査通過率は約85%。リジェクトされた15%の主な理由は以下だ。

  • 類似画像の重複(リジェクトの約40%): プロンプトを微調整しただけの「ほぼ同じ画像」は弾かれる
  • 品質不足(約25%): ノイズ・アーティファクト・不自然な合成が目立つもの
  • 商標・ブランド要素の混入(約20%): ロゴや特定企業を想起させるデザイン
  • 人物の不自然さ(約15%): 指の本数、歯並び、左右非対称の瞳など

通過率を上げるコツは、1プロンプトにつき4枚生成される中からベスト1枚だけを厳選すること。量産のために全枚出品するのは審査落ち率を上げるだけだ。

2026年後半のコモディティ化リスク——正直な見通し

AI画像のストックフォト副業には、正直に言って逆風が吹き始めている。

1. 参入者の急増による単価下落

2025年後半から、AIイラストの出品数はPIXTAだけで前年比3倍以上に膨らんでいる(PIXTA 2025年度クリエイター統計より)。供給過多で1DLあたりの単価は下落傾向にあり、2024年初頭に約35円だった平均単価が、2026年5月時点で約25円まで下がっている。

2. プラットフォーム側の規制強化

Getty Imagesは2023年にAI生成画像の受付を全面禁止。Shutterstockは受付を継続しているが、AI生成画像専用のフィルタを導入し、購入者がAI画像を除外できるようにした。PIXTAとAdobe Stockは現時点で受付を継続しているが、今後の方針変更リスクはゼロではない。

3. 著作権リスクの不透明さ

日本では文化庁の「AIと著作権に関する考え方について」(2024年3月公表)で、AI生成物にも著作権が発生しうるとの見解が示されたが、判例の蓄積はまだ少ない。米国では著作権局がAI生成画像の著作権登録を原則拒否しており(U.S. Copyright Office AI Policy)、国際的にはグレーゾーンが続いている。

結論から言うと、2026年後半以降は「数で勝負」の戦略が通用しにくくなる。ニッチなビジネス素材や、日本市場に特化した季節行事素材など、AI大量生成では埋もれにくいジャンルに絞る戦略が重要だ。

始めるなら押さえるべき5つのポイント

それでもAI画像販売を始めたい人に向けて、17ヶ月の経験から得た実践的なアドバイスを5つにまとめる。

1. まずはBasic Plan(月0)で100枚出品してみる

最初からStandard Planに課金する必要はない。Basic Planで月200枚生成し、厳選した100枚を出品。3ヶ月で300枚を出してDL数の傾向を見てから投資を増やすかどうか判断しよう。

2. ビジネス素材×日本語キーワードで差別化

PIXTAでは日本語のタグが検索上位を決める。「ビジネス 会議 イラスト」「DX 推進 イメージ」など、日本の企業担当者が検索しそうなワードを50個以上つけるのが鉄則だ。

3. 季節素材は2ヶ月前にアップロード

年賀状素材なら11月上旬、桜なら2月、花火なら5月。購入者は早めに素材を探すので、シーズン本番では遅い。

4. Upscale(高解像度化)を忘れない

ストックフォトサイトでは高解像度ほど単価が上がる。Midjourneyの生成後に必ずUpscaleし、最低でも4000×3000ピクセル以上で出品しよう。

5. 売上は雑所得として確定申告が必要

副業のストックフォト収入は雑所得に該当する。年間の売上からMidjourneyの月額費用などの経費を差し引いた所得が20万円を超える場合は確定申告が必要だ(国税庁 No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人)。20万円以下でも住民税の申告は必要な点に注意しよう。

FAQ

AI生成画像をストックフォトで売るのは違法?

2026年5月時点で、日本ではAI生成画像の販売自体を禁じる法律はない。ただし、他者の著作物に類似した画像を販売すれば著作権侵害になりうる。文化庁の「AIと著作権に関する考え方について」を確認し、既存作品に酷似していないか自分で判断する必要がある。

Midjourney以外のAI(Stable Diffusion等)でも出品できる?

PIXTAとAdobe Stockは生成ツールを限定していない。Stable Diffusion、DALL-E 3、Adobe Fireflyなどで生成した画像も出品可能だ。ただし、各ツールの利用規約で商用利用が許可されているプランを使うこと。

月いくらくらい稼げるようになる?

出品数1,000枚未満の段階では月500〜2,000円程度が現実的なライン。5,000枚を超えたあたりから月5,000〜10,000円が見えてくる。ただしジャンル選定で大きく変わるため、ビジネス素材に特化すれば少ない枚数でも単価は上がりやすい。

審査に落ちた画像は再出品できる?

プロンプトを変えて再生成した別画像なら再出品できる。同じ画像の再申請は基本的にリジェクトされるので、修正するより新しく作り直すほうが効率的だ。

PIXTAとAdobe Stock、どちらに出すべき?

両方に出すのがベスト。同じ画像を複数サイトに出品すること(ノンエクスクルーシブ契約)は認められている。PIXTAは国内企業の需要、Adobe Stockは海外を含むグローバル需要を拾える。

参考文献